ボナンザVS勝負脳(書評)

将棋の本 書評
新 刊

新 刊


対象棋力:将棋ソフトに興味がある方
阪田大吉の満足度:80%



2006年の世界コンピュータ選手権で、将棋ソフト「ボナンザ」が初出場初優勝の快挙を成し遂げ、一世を風靡しました。

この本は、その「ボナンザ」の製作者である保木邦仁さんと、竜王 渡辺明さんがコンピュータ将棋に対する考えを包み隠すことなく披露してくれている本です。

保木さんが書いている部分では、「ボナンザ」がどのようなことを主眼に入れて計算をはじき出しているのかが説明されています。そこでは、「ボナンザ」に限らず、将棋ソフトの思考回路を学ぶことが出来ます。ただ、できる限り噛み砕いて書かれてはいるようですが、専門的な話が多く、難しかったです。

渡辺竜王が書いている部分は、将棋ファン必見です。「ボナンザ」との公開対局の前に渡辺さんが「ボナンザ」対策として準備していた作戦や、将棋ソフトの弱点、将棋ソフトがどのくらい強いのか等を、具体的な例を挙げながら語ってくれています。
また、実際対局した時に、渡辺竜王の脳裏を駆け巡った感情を事細かく文章にしている点は、話に引き込まれてしまいました。
それから「ボナンザ」に対する考えばかりでなく、「トッププロがどのような指し手の読み方をするのか」とか、「どのくらいがんばったら、プロになれたのか」とかも書かれてあり、棋力向上に対するヒントもありました。

2人の対談も人間(渡辺)とコンピュータ(ボナンザ)の手の内を明かしあってるのですが、大変興味深い内容が書かれています。

最後の約10ページが、将棋やボナンザとは全く関係ない、科学的な難しい話で終わってるのは解せませんでしたが、全体的には、コンピュータ将棋について、製作者側ばかりの見解のみでなく、竜王という最高峰の棋士が評論しているところが、この上なくおもしろかったです。

私はこの本を読んで、将棋ソフトの思考回路に対する知識が飛躍的に深まりました。
将棋ソフトに興味がある方には、お薦めできる一冊です。



<目 次>
第1章 ボナンザ誕生(保木邦仁)
第2章 コンピュータとの対決(渡辺明)
対 談 保木邦仁 × 渡辺明
第3章 コンピュータ将棋の新たなる可能性(保木邦仁)
第4章 プロ棋士はこう考える(渡辺明)
終 章 科学的思考とは?(保木邦仁)
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