第2回電王戦のすべて(書評)

将棋の本 書評
新 刊

新 刊


阪田の満足度:85%




amazon内容紹介より

「棋士がコンピュータに負ける――。
そういう日が遠からず来ることがあるとしても、そこに自分が対局者としているなんて、一体いつから想像できただろう」(佐藤慎一)

ニコニコ生放送で累計200万人以上が視聴した、プロ棋士VSコンピュータ将棋による世紀の団体戦「第2回電王戦」。
あの戦いの真実を出場者本人が語ります。プロ棋士5人による濃密な自戦記。プログラマーによる対局分析。観戦記、コンピュータの歴史を語る座談会など。
「第2回電王戦のすべて」のタイトルにふさわしく、血の出るようなあの戦いをあらゆる角度から振り返る内容となっています。

特に、プロ棋士による書き下ろし自戦記はいずれも渾身の内容。一局一局にテーマがあり、ドラマがあり、棋士の人生があります。

第1局 やるべきことをやった 阿部光瑠
第2局 一局入魂 佐藤慎一
第3局 鏡を通して見えたもの 船江恒平
第4局 チームで勝ちたかった 塚田泰明
第5局 強敵と指せた喜び 三浦弘行

放送では観ることのできなかった舞台裏、対局者の心の揺れ動き、終わった今だから言えること・・・。あの春の決戦のすべてが、この一冊に凝縮されています。



<書評>

第2回電王戦に出場した棋士の自戦記をメインに構成した本です。

第1局から第5局までのそれぞれが「出場棋士の自戦記」「開発者への50の質問」「出場ソフトの対局分析」「対局後インタビュー」「Ponanzaの目・激指の目」「観戦記」で構成されています。

ただし、第4局だけ「開発者への50の質問」と「出場ソフトの対局分析」がありません。これは第4局に出場したPuellaαの開発者である伊藤氏の意向だったようです。

それから「Ponanzaの目・激指の目」というのは、二つのソフトによる形勢評価グラフとポイントとなる局面でのそれらの読み筋と評価値が書かれてありました。

それぞれの項目の総ページは以下の通り。

○出場棋士の自戦記・・・全105ページ

○開発者への50の質問・・・全22ページ

○出場ソフトの対局分析・・・全8ページ

○対局後インタビュー・・・全10ページ

○Ponanzaの目・激指の目・・・全11ページ

○観戦記・・・全35ページ


上記に下記の内容を加えたものがこの本の主な内容

○羽生善治三冠直前インタビュー・・・全4ページ

○コンピュータ将棋の歴史を語る(柿木義一氏、棚瀬寧氏)・・・全9ページ

○コンピュータ将棋の未来を語る(柿木義一氏、棚瀬寧氏)・・・全2ページ


各項目には写真がたくさん掲載されているので(もちろん白黒)、第2回電王戦を観なかった人でも雰囲気が伝わってくると思います。

さて、上を見てもわかるように内容は棋譜について言及するものが大半です。

ですから棋譜並べをやらない人が読んでも、この本の良さは半分も伝わらないでしょう。

とは言っても将棋ファンならば激指のような検討モードがある将棋ソフトを持っていれば問題ありません。

検討モードにした激指の盤上に書かれている棋譜を並べれば、内容は簡単に理解できます。私もそうやって読みました。

それにしてもこの本の最大の見所である棋士の自戦記はおもしろいですね。読んでいてワクワクしました。

出場した棋士達が電王戦をどのように考え、どのような準備をして、対局中はどのような読みでどのような心境だったのかなど、出場者本人しか知り得ない情報が詳しく書かれています。

第2回電王戦をニコニコ生放送で一部始終観ていても、そこは知ることが出来ないし、ある意味第2回電王戦で一番おもしろい部分なのかもしれません。

それからコンピュータ将棋が好きな私にとって、プロ棋士によるコンピュータ将棋対策の話にはとても満足しました。

特に阿部光瑠四段のそれが綿密でとてもおもしろかったです。(習甦が一般では手に入らないのが残念)


「観戦記」と「対局後インタビュー」は第2回電王戦の公式サイトとニコニコ生放送で知ることが出来る情報ですが、さっき第1局の観戦記を公式サイトで見たら本に書かれている内容の後半がなかったのですが、カットしたのでしょうかね?カットされてもおかしくない内容ではありましたが(^^)。


開発者への「50の質問」は開発者の姿を垣間見ることが出来るます。一方で開発者にも電王戦に対する考えを自由に表現させて欲しかったような気はします。

また、開発者の中で最も目立っていたPuellaαの伊藤氏の言葉が「対局後インタビュー」以外でなかったことについては、理由が何であれ残念に思う読者は少なくないかもしれません。


他に柿木義一氏と棚瀬寧氏の対談はおもしろかったですね。

お二人はコンピュータ将棋界の大功労者で、私も柿木将棋や東大将棋ではよく遊んだし、コンピュータ将棋の発展に尽力した彼らの言葉を知ることはとても有意義で、蛇足にはならない良いオマケだったと思います。


「第2回電王戦のすべて」は第2回電王戦に熱中した&将棋が好きだ、という方にはおすすめの一冊です。私と同じように満足する確率は高いでしょう。

第2回電王戦に興味がある&将棋が好きだ、という方にもおすすめです。第2回電王戦を観ていなくとも要点の半分以上を知ることは出来そうです。

しかし、第2回電王戦に熱中したり興味があっても将棋はそれほど好きではない人やコンピュータ将棋が全知全能だと信じている人が読むとあまり共感は得られないかもしれません。

棋譜並べをやらないと内容が伝わらないし、ほとんどがプロ棋士寄りの見解だからです。

ですから私は満足しました。ただ対局結果はプロ側が負けているので読んだ後に快活な気分になれなかったのは事実です。

よって、満足度は85%とさせて頂きました。


<各章の感想>

第2回電王戦のすべて 第1局の感想

第2回電王戦のすべて 第2局の感想

第2回電王戦のすべて 第3局の感想

第2回電王戦のすべて 第4局の感想

第2回電王戦のすべて 第5局の感想




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