天才棋士降臨・藤井聡太 炎の七番勝負と連勝記録の衝撃(書評)

将棋の本 書評

対象棋力:自戦記を読むのが好きな将棋ファン
阪田の満足度:★★★★☆

インターネットテレビAbemaTVで企画された「炎の七番勝負」を、藤井四段の自戦記をメインに、羽生三冠をはじめとした対局者など、そこに関わった棋士たちの言葉とともに振り返る一冊。

29連勝の話題も前半約30ページ、ラスト約15ページと、ページ数はそれなりにあるのですが、その偉業を語るには紹介程度の内容だと思います。

1ページ当たりの文字数は比較的少なく、サクサク読めます。

藤井聡太四段の言葉をたくさん掲載していることが、この本の最大の特徴で、最近はコンピュータ将棋に影響を受けていることや、藤井四段の過去と現在の違いなどを、それらを藤井四段の言葉で知ることをできるのは、とても価値ある情報だと思います。

ところでこの本は、最大の魅力となっている藤井四段による「炎の七番勝負」の自戦記が、総ページ数の約半分を占めます。

その内容は他の棋士の自戦記と同じように、対局中にどういう手順を考えていたのか、対局後にどういう手順に気付いたのか、そういった手順の話がメインになっています。

したがって、盤駒を使って並べないと(PCでもOK)書いている内容はわかりませんし、藤井四段が考えていたくらいの手順なので、かなり高度な内容だったりします。

「炎の七番勝負」の戦型は、角換わり3局、矢倉1局、ゴキゲン中飛車2局、ダイレクト向かい飛車1局。それらの戦型を好きな人が読めば、おもしろさはさらに増しそうな気はします。

逆に、棋譜並べをあまりしない人、できない人向けの本ではないです。

「炎の七番勝負」の指し手に関して語っているのは藤井四段だけではなく、対戦した棋士、師匠の杉本八段、企画した鈴木九段も解説しています。(それぞれの棋士達が、藤井四段について、プロ棋界で何番くらいの強さかを語っていたのも興味深い)

よって、「炎の七番勝負」を振り返るという意味では、極上の一冊に仕上がっています。

一方、29連勝の話題については、最初の30ページで1戦1戦を手短に振り返り、それは読み物というよりも資料に近く、ラスト15ページは「対加藤戦」と「対近藤戦」の藤井四段による簡単な自戦記と棋譜、「対増田戦」と「対佐々木戦」の筆者不明の簡単な観戦記と棋譜が掲載されています。(デビュー30戦のポイントとなる対局は、私が選んでもその4局になると思う)

ポイントを押さえた自戦記、観戦記に関しては、私はそれを読みやすいくらいにしか思わないのですが、今となっては、藤井四段の活躍は29連勝がメインで「炎の七番勝負」の方はサブなので、それが逆になっているこの本にやや物足りない感があったのは否めません。

また、上にも書きましたが、手順の話がメインなので、棋力が高い人ほど面白さは増す本なのだろうと思います。そういうわけで、私の満足度は80%とさせて頂きました。

デビュー間もない藤井四段の自戦記を読むことが出来る本なので、将棋ファンにとっては価値ある一冊のような気はします。


※私の棋力 → 将棋倶楽部24の二段、将棋クエスト10分の三段(最高2000台)


<主な内容>
第1章 藤井聡太 炎の七番勝負と29連勝
第2章 藤井聡太インタビュー
第3章 炎の七番勝負第7局自戦記 藤井聡太
第4章 羽生善治が見た藤井聡太 羽生善治三冠
第5章 炎の七番勝負第1局~第6局自戦記 藤井聡太
第6章 藤井聡太四段と対戦して - 対局者のコメント
第7章 炎の七番勝負を振り返って 炎の七番勝負企画者 鈴木大介九段
第8章 藤井の七番勝負を見て 師匠 杉本昌隆七段
第9章 公式戦29連勝の軌跡
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