将棋 初段一直線(PC Engine)

将棋ソフト
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対応機種PC Engine
発売元ホームデータ
発売日1990年8月10日
最高棋力激指15の7級【30分/97手】
特記事項・日本将棋連盟公認初段認定用ソフト
・条件クリアで段級位を申請出来た

※【】内は下記50局における消費時間と手数の平均


目次

将棋 初段一直線とは


将棋初段一直線は1990年に発売されたPCエンジン初の将棋ソフト。

ゲーム内の条件をクリアしてパスワードを取得することで、日本将棋連盟に段級位を申請出来ました。(平成3年8月に受付終了)

発売元の「ホームデータ」は、1993年に社名を「魔法」に改名。


主な機能


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「将棋桃太郎」アイテムや待ったを使える初心者・子供向けの対局
「本格将棋」4~6級の相手と練習対局が出来る
「初段認定戦」勝ち抜いた数によって段・級位を申請出来た(受付終了)
「名人戦対局」最も長考するCOMとの対局モード
「対局モード」人対人で遊ぶことが出来る。


将棋初段一直線の棋力


先手番の棋力


どのくらいの棋力があるのか、激指15と何十局も対戦させてみました。

まずは初段認定戦のラストボス的位置付けになる「1級」から。

■将棋初段一直線1級の対戦結果
対激指15の10級 → 一直線の6勝4敗【81分/105手】
対激指15の9級 → 一直線の2勝8敗【62分/100手】

※対局は全て初段一直線が先手。
※【】内は初段一直線の消費時間と対局の手数の平均


続いて取扱説明書にも「史上最強の強さ」と書かれてある「名人戦対局」を検証してみました。

■将棋初段一直線初段の対戦結果
対激指15の9級 → 一直線の4勝6敗【116分/101手】
対激指15の8級 → 一直線の3勝7敗【100分/101手】

※対局は全て初段一直線が先手。
※【】内は初段一直線の消費時間と対局の手数の平均

名人戦対局では、COMの考慮時間が200分を超えることも時々あり、6時間を超えたこともありました。

それにしても、初段と1級の強さの違いがよくわかりませんでした。

ぶっちゃけ、1級の方はユーザー側が1手20秒の制限付きなので、1級に勝つことの方が難しいです。

しかも、初段一直線の1級と初段で全く同じ棋譜が出来上がったこともありました。一方で、途中で変化したものもありました。

いずれにしても、初段一直線の1級と初段の指し手の強さは、あまり変わらないと思います。

それよりも、最強を謳っている割に、このソフトの約3年前に発売されたファミコンソフト「谷川浩司の将棋指南2」と比べた時、序盤のパターン数こそ多いので攻略は難しそうですが、指し手の強さは同程度で、思考時間は初段一直線の方が圧倒的に長い。

そのことを踏まえると、初段一直線の方が強いということには、疑問が生じました。

ところで、後手番での強さはどうなのか?


後手番の棋力


なお、将棋初段一直線は各段級位の手番が決まっています。

奇数段級位はCOMが先手、偶数級位はCOMが後手になっています。

さて、4級の棋力を検証してみました。

■将棋初段一直線4級の対戦結果
対激指15の10級 → 9勝0敗1分【18分/97手】
対激指15の9級 → 8勝2敗【19分/107手】
対激指15の8級 → 5勝3敗2分【25分/137手】
対激指15の7級 → 3勝7敗【21分/104手】

※対局は全て初段一直線が後手
※【】内は初段一直線の消費時間と対局の手数の平均

このゲーム、歴代名人のそっくりさん達はダミーで、ただのおばさんと思わせていたこのキャラこそが真のボスキャラということ?

発売から30年間、誰も気づかなかったミステリーが潜む、アドベンチャー要素も盛り込んでいた、そんなゲームだったのだろうかと、なかば本気で思った次第。

そして、将棋AIとは考えれば考えるほど強くなるという、あの定説は一体なんだったのかと、常識が覆されそうになった瞬間でもありました。

 ---いや、待てよ。---

同じ後手番でも最上位にある「2級」の方はどうなのかと、こちらも検証してみました。


■将棋初段一直線2級の対戦結果
対激指15の10級 → 10勝0敗【20分/79手】
対激指15の9級 → 10勝0敗【25分/79手】
対激指15の8級 → 6勝4敗【32分106手】
対激指15の7級 → 6勝4敗【34分/109手】
対激指15の6級 → 4勝6敗【39分/113手】

※対局は全て初段一直線が後手
※【】内は初段一直線の消費時間と対局の手数の平均

どうやら、将棋初段一直線では後手番の方が強く、「2級」が最強という結論が出ました。

確かに前述のファミコンソフト「谷川浩司の将棋指南2」よりも、将棋初段一直線の方が強いことがわかりました。


後手番の方が強い理由


それにしても何故、後手番の方が強いのか。

人の体感だと、このソフトは後手番の方が強く思えるのかどうかは不明ですが(私の体感ではどちらも似たようなもの)、コンピュータとの対戦では後手番の方が強くなる明確な理由があります。

このソフトは後手番の時に、相手が横歩取りをやってくると、必ず△45角戦法をやってくるのですが、その定跡手順だけは、他に比べて、かなり深いところまで認識しているのです。

上の対戦では、初段一直線が後手番になると3~5割くらいの確率で横歩取りになるのですが、両者が自力で考え始める局面まで進むと初段一直線の方が有利なことが多く、そのことが後手番で強くなる主な理由のひとつと考えられます。

しかし、横歩取り以外の形でも、後手番の方が強い気はしましたが、それが何故なのかはわかりません。

それにしても、横歩取り△45角戦法だけは異常に強いのは、やっぱり神戸の会社が作ったからなのか(神戸は△45角戦法を流行らせた谷川九段の出身地)、それとも単に当時の流行を反映しているだけなのか、いずれにしても非常に面白い特徴です。


その他、気付いた点


他に気付いたこととしては、7手詰めは大抵のケースで見つけるようですが、必ず見つけるというわけでもないようです。

一方で、9手詰めは見つけられないことが多いのですが、5分近くを考えて見つけたこともありました。

前述のファミコンソフト「谷川浩司の将棋指南2」が3手詰めならば、大抵のケースで見つけていたことを考えると、詰将棋力が4手進歩しているのだから、そこは終盤力の差として大きな要因になっているはず。

それから、定跡手順が約8000手ほど収録されているらしく、コンピュータの序盤がワンパターンではないのも大きな特長。序盤は比較的多彩です。

しかし、横歩取り△45角以外は、どれも仕掛け以降を認識していないので、せっかく作った形を生かしきれてない印象。

例えば鬼殺しも桂馬を跳ねても仕掛けないので、単に桂の高跳び歩の餌食になったり、せっかく定跡手順で組み上げた美濃囲いも、認知している手順から外れると、見たこともない激ヨワの囲いに組み替えたりと、そういうのがありがちです。

そもそも、定跡通りの進行でない限り、初段一直線がメジャーな囲いを築くことはありませんでした。

最後にもうひとつ、千日手は認識しませんでした。当時はそれが普通で、むしろ、千日手を認識する当時の将棋ソフトを知りません。


総評


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私が家庭用ゲーム機の将棋ソフトで初めて遊んだのはファミコンの森田将棋ですが、自分で購入した初めての将棋ソフトはこの「将棋 初段一直線」です。

当時はこのゲームに登場するおばさん(6級)に苦戦していた記憶があります。

初段認定戦の方は、どうせ勝てないと最初からあきらめていて、1回以上はやったはずですが、遊んだ記憶はほとんどありません。

それでも名人(初段)と対局して、1度だけ勝ったことがあり、その直後に怒涛の感動が押し寄せ、「俺スゲー」と有頂天になっていたことも記憶しています。

しかし、今回の検証で実は大して強くないことが発覚し、そういう頃もあったと、懐かしい気持ちにもなりました。

今回、約30年ぶりに遊んだわけですが、最初にやってみたのは初段認定戦です。

結果は
一戦目(3級 1手40秒 手数制限110手)→96手
二戦目(2級 1手30秒 手数制限100手)→83手
三戦目(1級 1手20秒 手数制限90手)→78手
で、目出度く初段認定を頂きました。申請の受け付けはとっくの昔に終了してますけど。

直後の感想としては、初見でクリア出来たならば、初段認定も妥当ではないかと思いました。

ところが、棋力を検証してみると、思ったよりも弱い。しかも、何十回もやれば、攻略手順もわかってきそう。

それでも、持ち時間は短く、手数制限まであるわけで、将棋倶楽部24の10級くらいの棋力がないとクリアが難しそうであることを考えると、それくらいの棋力があれば、将棋世界の段級位認定問題で初段を取得できるのだから、やっぱり、このゲームの条件での初段認定は適正だったのだろうと思います。

全体的な印象ですが、駒の文字こそ見辛いのですが(当時は絵として文字を書くのは難しかったらしい)、色合いなど全体的な雰囲気は明るく、キャラの画像も将棋ソフトの中では頑張っている方で、何と言ってもBGMは将棋ソフト屈指の佳曲揃いだと思います。

名人戦対局のBGMは、如何にも昭和な感じの演歌調の曲で、ある意味笑いを誘います。

どのキャラも自分が勝つと大言壮語を吐きまくり、リアルでそういうのが居るとムカつきますが、ゲーム内でのそういうのは不思議と笑いしか出て来ず、如何にも関西風のノリ。

それから取扱説明書にこそ書かれてないのですが、「将棋桃太郎」のエンドロールに増田裕司六段と淡路仁茂九段と指導員の尾谷仁史さんの名前がありました。

これが発売された当時は、取扱説明書にある通り最強の将棋ソフトだったと思うのですが、思考ルーチンを作ったのは誰なのかは気になったところ。前述のエンドロールにも、私が知っている将棋ソフトの開発者の名前は見当たりませんでした。

ファミコンソフトに比べると知名度は落ちるのかもしれませんが、日本将棋連盟が初段を認定する試験対局のようなものもあったりして、初期の将棋ソフトの傑作と言って良いと思います。

ところでこのソフト、ネット上では「将棋修行初段一直線」という名前で紹介されているのを多々見かけるのですが、ケースにも取扱説明書にも、タイトル画面にも「修行」という文字はありません。どういうことでしょう?


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