
対応機種 | PlayStation |
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発売元 | ASCII |
発売日 | 1998年3月26日 |
最高棋力 | 激指15の初段【133分/132手】 |
特記事項 | ・詰将棋100問を収録 ・学習機能を搭載 |
※【】内は32局行った際の1局における消費時間と手数の平均
目次
柿木将棋2とは
柿木将棋2とは1998年3月にアスキーから発売されたプレイステーション用の将棋ソフト。
世界コンピュータ将棋選手権には、1990年12月の第1回大会から出場しており、現在に至るまで毎年のように出場している。初期の強豪ソフトで1997年2月の大会では3位、1998年2月の大会では4位だった。
また、思考ルーチンの開発者である柿木義一氏は、ネット中継で使用されているWEB用の将棋盤( Kifu for JavaScriptなど)や、棋譜管理ソフト(Kifu for Windows)の作者としても知られる。
主な機能

「対局」COMのレベルは6段階。COM同士や人同士の対戦も可。
「盤面編集」好きな局面を作ることが出来る。
「設定」振り飛車・居飛車等の定跡指定やサウンド、盤・駒画像などの設定。
「ロード」セーブした棋譜や、収録されている詰将棋問題及び古棋譜を呼び出す。
「セーブ」COMとの対局棋譜や、作成した盤面をセーブすることが出来る。
「棋譜の再現」対局した直後の棋譜を再現することが出来る。
柿木将棋2の棋力
棋力の検証
柿木将棋2の棋力を客観的に判断するため、激指15と対戦させてみました。
柿木将棋2の方は最高棋力である「レベル6」で対戦させました。
■対戦結果
対激指15の1級 → 柿木将棋2の5勝3敗【139分/135手】
対激指15の初段 → 4勝4敗【159分/138手】
対激指15の初段+ → 柿木将棋2の1勝7敗【105分/122手】
柿木将棋2は、1局に2~3時間を使うと、激指15の初段相当の強さがあるようです。
気付いたこと
●メジャー戦型の定跡は一通り入っている
激指等に比べると数は多くないですが、メジャー戦型の定跡手順が一通り入っています。
当時の定跡手順で進めると20~30手、多い時は40手くらいまで認知している定跡手順を指し進めます。当然の如く、振り飛車の定跡も入っているのですが、柿木将棋2が振り飛車を指す確率は1割程度でしょうか。
●9手詰め以下はだいたい詰ます
9手詰め以下はだいたい詰ますのですが、外したこともありました。詰将棋問題の解図だと9手詰めは30秒以内ですが、対局時では9手詰めを外したこともありました。一方で13手詰めを詰ますこともありました。
●千日手を認識している
同一局面が4回出現すると、自動的に千日手引分となりました。
詰将棋問題について
5~19手詰の詰将棋問題が100題収録されています。
柏川悦夫氏、吉田健氏、柳田明氏、小西逸生氏、門脇芳雄氏の作品を中心に、江戸時代の作品も収録されています。
私も全題を解いたので、その回答結果を表にまとめておきます。
手数 | 問題数 | 平均時間 | 正解率 |
---|---|---|---|
5手詰 | 1問 | 8秒 | 100.0% |
7手詰 | 18問 | 7分53秒 | 100.0% |
9手詰 | 18問 | 11分5秒 | 100.0% |
11手詰 | 16問 | 18分27秒 | 87.5% |
13手詰 | 12問 | 12分30秒 | 91.7% |
15手詰 | 22問 | 28分51秒 | 95.5% |
17手詰 | 8問 | 26分30秒 | 100.0% |
19手詰 | 5問 | 38分51秒 | 80.0% |
TOTAL | 100問 | 18分16秒 | 95.0% |
誰がどう考えても難問集です。詰将棋解答選手権の一般戦と同じくらいの難易度だと思います。
比較的最近の問題集「羽生善治の実戦詰将棋 戦術眼を極める超難問100撰」と比べても、こちらの方が難易度はやや高め。
平均手数は11.9手。
形は普通っぽいものも多いですが(ただしムズイ)、入玉形や盤面中央付近の曲詰め、あぶり出しなども多数。
ヒントは手数表示のみで、答えも解説もありません。
答えは、このソフトに「詰将棋を解く」という機能があるので、それを使うことになるのですが、ソフトが答えを見つけるまでの時間は1問平均2分28秒でした。
9手詰めまでは、ほとんどの問題を数秒で見つけるのですが、15手を超えるともう大変。
30分くらい掛かっているのもありました。(第69問と第73問で、第69問の時は解図出来ないのではないかと、30分経ったところで1度はあきらめました。再びやってみたら32分ほどで答えが出ました。)
オマケに、1割くらいの問題は駒余りの順を示します。それ、玉の逃げ方を間違っているので、不正解なんですよね・・。
今でこそ、解図してくれるソフトはゴロゴロあるのでそういう問題でも正解の確認は可能ですが、当時購入した人は正解が分からず終いになったのではないかと思ったりしました。
これを95%以上の正解率で全題解いた人というのは、購入した人のうち5%も居なかったのではないでしょうか。20年前の私も解いた記憶は微塵もありません。(当時の私の棋力で解けるはずもありません)
なお、作品自体は力作揃いです。ただ、詰パラなどを購読してる人たち向けの難問集なのです。
ところで、私は江戸時代の詰将棋は難しいと決めつけていて、これまでほとんど解いたことがなかったのですが、意外なことに私でも解けることが判明したのは大きな収穫。
江戸時代の詰将棋には余詰めがあるものもチラホラ見当たりました。
また、第56問にも余詰めがありました。どうでもいいのですが、ちゃんと解いた証として記しておきます。
個人的には第4問(吉田建氏の作品)が一番の良問に思えました。最終手以外は全て意外な一手で、ある合駒だけは不詰になる紛れ筋があったりと、素人でも凄いと思える作品でした。
いろいろ書きましたが、全100題を解いた後には達成感もあった次第。
学習機能について
このソフトのセールスポイントだった一つに「学習機能」というのがあります。
メモリーカード15ブロックのうち、10ブロックも必要とする機能。
しかし、取扱説明書には、
としか、書かれていません。「学習の使用」をチェックしている場合は、学習を行います。
学習データを初期化したい場合は、「学習の初期化」ボタンを押してください。
これが、いったい何なのか?
取説にある情報だけでは、理解不能。
当時の将棋世界などに出していた広告には、
とか、近頃、あいつは対局するたび 強くなっている。なぜだ。
と書かれています。過去の対戦を記憶、プレーヤーの指し方のクセを見抜き、最善手を打ってくる新学習機能を新たに搭載しました。コンピュータは、次第に強くなっていく訳ですから、同じ手では勝てなくなります。
「打ってくる」とか「新〇〇を新たに」といった部分に違和感もありますが、それはこの際おいといて、とにかく、学習機能とやらを使うことで、同じ手では勝てなくなるらしいです。
本当に強くなるのか、それとも単に負けた手を指さなくなるだけなのか、そのうち、時間を見つけて確認してみたいと思います。
総評

私はこのソフトを発売からそれほど経ってない頃に購入しており、1、2度は勝った記憶もありますし、大苦戦していてほとんど勝てなかった印象も残っています。(当時の私の棋力は、推定で将棋倶楽部24の10~12級くらい)
そして、なんといってもタイトル画面で流れるBGMは、最後に遊んで20年以上経った今でも耳に残っていました。将棋ソフトのタイトル画面BGMでは一番の名曲だと思います。
今回、20数年ぶりに最高棋力のレベル6と対戦してみたのですが、結構手こずりました。
攻められることは無かったのですが、しぶとく受けられて、勝ち切るまでに150手くらい掛かりました。
その後、激指15と対戦させてみると、初段と互角だったので、20数年前の私が勝てなかったのも納得です。
発売された当時は、家庭用ゲーム機の将棋ソフトで1番か2番目に強かったと思われます。
しかし、コンピュータは1局に2~3時間を使うので、その最高レベル(レベル6)との対局は、今となっては実用的とは言えません。
当時の将棋ソフトは1時間くらいを考えるのはザラでしたが、さすがに2~3時間以上かかる対局は、開始前に一大決心が必要でした。
デフォルトで設定されているレベル3ならば、5分くらいしか使わないので、将棋倶楽部24で10級くらいの人にとっては良い練習相手になるかもしれません。(レベル3の棋力が激指15の5~6級くらい)
全体的には、前作と比べて、棋力、グラフィック、問題数の全てが大幅にパワーアップしており、当時の将棋ソフトとしては傑作の部類だったのだろうと思います。
私はこれよりも強い、後発の東大将棋で遊んだ後に購入しているので、このソフトの強さに対する発売直後の感動を持ってないため、それを伝えられないのは残念。
20年以上前のことなので記憶は定かではないのですが、将棋雑誌にあった広告を見て、購入に至ったのだろうと思います。上記の「近頃、あいつは対局するたび 強くなっている。なぜだ。」は今でも記憶に残っていましたから。
当時に比べると、私の棋力は別人のようにパワーアップしているのですが(将棋倶楽部24の二段、将棋クエスト10分の四段)、収録されている詰将棋全100題を解くのは一苦労でした。なにせ、ドラクエやファイナルファンタジーが1本終わるくらいの時間を費やしましたから。
それに対する率直な感想と致しましては、やっぱり、モニターに映し出される問題図は、あまり難しくない方が良いと思います。目が疲れますから・・。(私だけかもしれませんが、30分も1時間も考えないといけない難問は寝っ転がって解きたい)
1998年までに発売された将棋ソフトの中では、良作の部類に入ることは間違いないです。
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