第70回NHK杯(佐藤九段vs稲葉八段)の感想

プロ棋戦
大盤解説2

3月14日に第70回NHK杯準決勝(佐藤天彦九段vs稲葉陽八段)が放送されました。

棋譜:NHK杯(公式サイト)
(※毎週、月曜日に更新されています)

目次

感想


戦型は後手の佐藤九段のノーマル三間飛車。

最近の佐藤九段は振り飛車を指すという話で、中飛車は今期NHK杯でも2度見たのですが、ノーマル三間飛車も指すことにはやや驚きもありました。

居飛車党の先生がとっておきの秘策として中飛車を指すのは時々あるのですが、ノーマル三間飛車を指すのはとても珍しい。

というか、ノーマル三間飛車が男性プロの公式戦で現れること自体が珍しいのです。

もっとも、佐藤九段の師匠である中田功八段がそのレアなノーマル三間飛車の使い手。

なお、本局で佐藤九段が指したのはコーヤン流ではなく、43銀型。(コーヤン流は53銀型)

なんにしても、振り飛車を好きな者にとっては、序盤から見応えのある展開になっていました。

中盤は稲葉八段の方から積極的に動き、対抗形らしく両者の飛車が対峙する盤面右側で戦いが勃発していたのですが、佐藤九段の70手△73桂で、駒の流れが稲葉八段側に傾きだしたようにも見えた次第。

大盤では△73角と相手の角にぶつけて激しく戦う順を阿久津八段が解説していて、本局の進行も稲葉八段のその後の猛攻が通る形となったので、そう見えたのかもしれませんが、感想戦でもそこがポイントとして検討されていました。

79手の局面では阿久津八段が「44同金以外の手があるんですかね?」「玉形が大差ですからないでしょう!」と解説していた矢先、佐藤九段は80手△57桂成と指し、阿久津八段が「おーー!」とこの日一番の驚きを見せ、勝負手である旨を認定していたことからも、佐藤九段が押され気味になっていたことがうかがえました。

そこからはすぐに素人目にも稲葉八段優勢の局面になったのですが、稲葉八段の105手▲95桂打(王手)は、プロとアマの違いを分明にする真のプロの一手。

正確にはその一手を含む、その後の手順がプロなのですが、脊尾詰によると▲95桂打以下のなんと31手詰めを30秒将棋でやってのけるのだから、本当にすごい。(※本譜は難しそうに見える方に玉を逃がしているので19手で詰み上がり)

105手は即詰みの順ではなくとも先手が勝てる局面ですが、失敗すると駒を渡し過ぎて負けになる順を、深い読みの裏付けの下、成功を確信して指せるプロの卓越した伎倆に感動すら覚えます。

本局は121手で稲葉八段の勝利。本局は対抗形でのプロの技の応酬、プロの詰将棋力を堪能できた素晴らしい一局だったように思います。

稲葉八段はNHK杯三度目の決勝進出。今年は優勝があるのかどうか。

決勝戦は全将棋ファン必見!


AIの形勢判断


第70回NHK杯準決勝第2局
※青色はGPSfish、赤色は水匠3
※AIの判断が正しいわけではありません。

トーナメント表


第70回NHK杯20210314

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コメント
  • 2021/03/15 16:01
    更新お疲れ様です。
    佐藤天九段の振り飛車ですが、角を△5一角型にしていました。(前回、先手中飛車での5九角型もありました)今回は3四飛車型の石田流に組むからでしょうが、何となく先に左桂を捌こうとされている様にも写りました。角の働きを中盤以降に取っておく作戦?でしょうか。

    75手目あたりでは駒があちこちでぶつかっていて、飛車の素抜きの筋もあってどれから取るのか迷いますが、先手が少し得をしたのかもしれませんね。

    稲葉八段の寄せも流石でした。左美濃囲いは堅いのですが、差しこなすのは難しく、本局では角の捌き方が巧みだと思いました。
    講座の講師は本戦ではなかなか勝っていない気がするのですが、2年連続で決勝進出はお見事ですね。
  • Re:
    2021/03/18 22:27
    言われてみますと、確かに角の渡し方が絶妙でしたね。今、棋譜を見直してみたのですが、そう思います。決勝戦はどうなるのか、楽しみですね。
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