第70回NHK杯決勝の感想

プロ棋戦
大盤解説2

3月21日に第70回NHK杯決勝(稲葉陽八段vs斎藤慎太郎八段)が放送されました。

棋譜:NHK杯(公式サイト)
(※毎週、月曜日に更新されています)

目次

感想


戦型は稲葉八段が先手で角換わり。

御二方は練習将棋をよくさしているとのこと。

そのためか、それとも編集されていたのか、50手くらいまではほとんどノータイムでスラスラ進んでいました。

解説の佐藤会長も進行が速い旨をたびたび話していたので、実際に見る見る間に局面が動いていたのだろうと思います。

その後、斎藤八段の一人千日手を経て――最近、レトロな将棋ソフトを研究していて分かったのですが、角換わりという戦型はプロであろうと、それに達してない棋力の者達であっても、千日手になりやすい?――ともかく、攻める斎藤八段、受ける稲葉八段の局面へと一転。

稲葉八段の61手▲49桂打に大盤の佐藤会長が「これはもう相手の手をすべて否定してますからね」「温厚な斎藤さんも怒ってくると思いますよ」と解説して、実際に斎藤八段が角を切り猛攻を見せたいたのは鋭い解説でした。

一方で実はその前の57手▲66歩や前述の61手▲49桂打は「(それを)指し難い」と解説されるや否や指された一手で、離れた場所に居る対局者と解説者との間にあろうはずもない妙なやりとりがあったのは、なんだかおもしろいものに見えた次第。

中盤以降はどちらが良いのか、A級棋士の佐藤会長でも判断できないほどで、素人には手番を握って攻めている方が良く見える大熱戦となっていました。

結果的に勝敗の分かれ目となったのは、斎藤八段の136手△35銀打。(※大盤でも佐藤会長がその旨を指摘していました)

相手に駒を渡すことなく、飛車を詰ましにいったはずの一手でしたが、稲葉八段がすぐに猛攻を仕掛けることで活路が開けるかもしれない、その段階ではあまりにも朧気で判然としなかった一筋の光が、指し進めて行くうちに次第に截然たる勝ち筋へと変わって行きました。

相手の歩頭に捨てた強手▲43金打(143手)がほとんど決め手。最後は斎藤八段の後手玉が詰み筋に入り、153手で稲葉八段の勝利。

稲葉八段はNHK杯3度目の決勝戦で、遂に初優勝。

優勝インタビューで時折笑顔を見せていた稲葉八段。とても嬉しそうでした。

準優勝でも充分すごいのですが、それに甘んじることなく、遂に優勝を達成した人を見るのは、観ているこちらまで、他人事ながら、清々しい気分になります。

それにしても、羽生世代・ポスト羽生世代がベスト4に一人も残らなかったのは、1992年度の第42回大会以来で、そのことも時代の流れを表しているような気がしました。

さて、来週は来年度のNHK杯出場女流棋士決定戦!

里見女流四冠vs西山女流三冠。

私などはどちらも出場させた方が良いと思うのですが、ここだけは時代が流れていないのか、それとも二枠にするための何か基準があるのか。兎にも角にも、来週も全将棋ファン必見!

AIの形勢判断


第70回NHK杯決勝
※青色はGPSfish、赤色は水匠3
※AIの判断が正しいわけではありません。

トーナメント表


第70回NHK杯トーナメント結果


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コメント
  • 2021/03/24 20:55
    今期も一年間NHK杯の観戦ブログを発行下さり、ありがとうございました。

    2年連続決勝進出の稲葉八段の優勝で締めくくられました。前回も記しましたが、講座の講師はNHKトーナメント勝ち上がり難い気が(?)していたので、快挙に思いました。

    先手が序盤9五歩と端歩を伸ばしたのに対して、後手は腰掛銀から桂馬の早跳ね策戦で、ときどき観られる型(角換り超速桂?)ではありますが、ノータイムで指されたのは早指し棋戦ならではでしょうか。

    終盤の135手目、先手は▲2六飛と中段に引きました。後手玉を寄せないのかと(アマチュア的には)拍子抜けしました。その直後136手目△3五銀で飛車金両取りがかかり、先手拙いのではと思っていたら、ここからの詰め筋、書かれていた様に特に143手目の▲4三金が見事でした。解説の佐藤康九段は△3五銀が緩手だった様な話をされていましたが、これは結果論とも仰っていました。AIの形勢判断をみると、130手目辺りは後手優勢の判定なので斎藤慎八段にもチャンスがあったのかもしれませんね。
  • Re:
    2021/03/26 02:17
    135手△35銀打が勝敗を分けたみたいですね。換えて△25銀打が正着だったようですが、そちらは見た目上にもプロっぽくない手で、それを読みの裏付けをもって選ぶには30秒では厳しかったということでしょうか。以前、渡辺名人がある本で、1手30秒では第一感の手の成立を精査する時間しかない旨を書いてました。少なかれ指運も勝敗を左右する、それほど際どい局面が幾つも現れた大激戦だったのだろうと思います。
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