第71回NHK杯(松尾八段vs伊藤四段)の感想

プロ棋戦
大盤解説

4月11日に第71回NHK杯1回戦(松尾歩八段vs伊藤匠四段)が放送されました。

棋譜:NHK杯(公式サイト)
(※毎週、月曜日に更新されています)

目次

感想


現最年少棋士の伊藤四段がどういう将棋を指すのかが興味深かった一局。

相手はプロ棋士約170名の中で上位の松尾八段。B級1組に在籍する強豪。

解説は伊藤四段の師匠で、かつては松尾八段とも研究仲間だったという宮田利男八段。実は羽生九段のデビュー戦の対戦相手で、昨日紹介したSFC用ソフト「羽生名人のおもしろ将棋」にも、その対局が解説付きで収録されています。

さて、戦型は伊藤四段が先手で横歩取り。

横歩取りにも大まかに二系統あって、中盤でねじり合うものと、中盤がほとんどないものに分けられると思うのですが、本局は後者の方。

そして、本局では解説の宮田八段がうっかりではないかとする王手飛車まで飛び出して、盤面はかなり早い段階で終盤戦に突入していました。

30手△95角と打たれた王手飛車を伊藤四段がうっかりしていたのか、それとも予定通りだったのか。その局面で考慮時間まで使っていたので、予定通りに見えなかったのは本音。今期から導入された将棋AIもその局面で松尾八段の65%と示していました。

王手飛車とは言っても、実質的には飛車金交換になっているのですが、32手の段階で飛車金交換はどう見ても飛車を持っている方がお得。

宮田八段もうっかりだったのか否かを感想戦で聞いてみる旨を話していましたが、秘策かもしれないし、勝負の世界の機微に触れるようなことは聞き難いのか、感想戦の折り遠回しにそれとなく探りを入れていましたが、そうとは知らない伊藤四段からは明確な返答を得られず、結局は謎のまま。

しかし、幾ら優位になっても初見の局面は松尾八段ほどの棋士でも、そこから有利を積み重ね続けるのは難しいらしく、松尾八段が時間を使って指した36手△26歩打にNHKの将棋AIは怒(おこ)。

その瞬間、AIの表示は伊藤四段58%とかに逆転してました。AIによるとその後の39手を本譜の銀を獲る▲31とに代えて、銀を獲らずに▲58玉ならば先手持ちだったそうですが、わけがわかりません。私ばかりでなく、AIの言うことはトップ棋士にさえ通じないことをこれまで幾度も目撃しました。

それはともかく、感想戦で松尾八段も36手目はどう指して良いのかわからなかった旨を話していました。初見の局面は上位のプロでも難しい、そのことは自分(著者)のヘボ将棋を弁護すると同時に、将棋のおもしろさの本質にも迫った気がした次第。

最終盤は松尾八段の後手玉にも詰めろが掛かって、松尾八段優勢で進んでいたものの、疑問手一発で形勢がひっくり返る際どい局面の連続。

それでも最後は松尾八段が82手△85金打から勝ちを確実にする深い読み筋へと局面を導き、86手で松尾八段の勝利。(脊尾詰によると、即詰みで討ち取るならば29手詰めらしい)

本局は振り飛車しか指さない私でも序盤から見応えのある、観る人をワクワクドキドキさせる素晴らしい将棋だったと思います。期待の新人・伊藤四段の棋風も少しだけ垣間見ることが出来ました。


AIの形勢判断


第71回NHK杯1回戦第2局
※青色はGPSfish、赤色は水匠3
※AIの判断が正しいわけではありません。

トーナメント表


第71回NHK杯20210411


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