第71回NHK杯(宮本五段vs出口五段)の感想

プロ棋戦
大盤解説

4月18日に第71回NHK杯1回戦(宮本広志五段vs出口若武五段)が放送されました。

棋譜:NHK杯(公式サイト)
(※毎週、月曜日に更新されています)

目次

感想


振り飛車を観ることを出来るのではないかと期待していた一局。

振り飛車党の宮本五段は三間飛車が得意とのことで、本局も先手番ノーマル三間飛車になっていました。

これに対して、昨年度の勝率7割5分の出口五段がどういう作戦で来るのか、振り飛車を好きな者としては序盤から見応えのある展開。なお、出口五段は三段時代に藤井二冠と新人王戦決勝を闘ったことでも有名。

さて、対局の方はノーマル三間飛車から相穴熊に発展していました。

度々書くのですが、穴熊は振り飛車の天敵で、その猛威により中飛車は一時期はプロ将棋で絶滅しました。三間飛車は指す人自体が少ないのですが、こちらも穴熊により甚大な被害を受けていたと聞いています。

目には目を、歯には歯を、という流れから来たのかどうかは知りませんが、穴熊には穴熊を、という展開はプロ棋戦で時々見かける作戦。

三間飛車でどうやって居飛車穴熊と戦うのかは序中盤の見どころで、大山名人が理想とした相手の力を利用して投げる振り飛車らしい指しまわしで、宮本五段は中盤までを互角に立ち回っていました。

飛車を振ることを減点ポイントとする画面上の将棋AIも、71手▲72角と角を相手陣に打ち合った局面を50%と評価していたことからも、宮本五段が上手く指しまわしていたことがわかります。

その時は大盤の山崎八段も振り飛車の方が調子良くなってきた旨を解説していて、実際、宮本五段の方が攻勢で行けそうなムードが漂っていました。

しかし、出口五段の84手△56歩は次のと金作りを見せながら(穴熊にはと金攻めが最強の手段)、僻地に流れていた77の馬を自陣に利かせた味の良い一手。

それでも宮本五段が87手▲82飛と敵陣に飛車を打ち下ろした追撃の一手で、大盤からは宮本五段持ちである雰囲気が伝わって来てたのですが、それに対して出口五段が88手△33飛と駒台の飛車を自陣に打ち下ろすと、解説の山崎八段は「はーーぁ!さすがですね!」とこの対局で一番感心した様子。

誰でも駒台の飛車は敵陣に打って暴れさせたいはずで、その猛将を自陣に配置するのは奇想天外の妙手。宮本五段も感想戦で「見えていなかった」旨を述懐していました。

その一手で出口五段の後手陣は難攻不落の堅陣となり、宮本五段が攻めあぐねている間に出口五段は攻撃態勢を整えて形勢逆転。

終盤は出口五段の方はゼット(絶対に詰まない形のこと)で、攻めも切れない形となり136手で勝利。

将棋においては、攻めは皆上手いのですが、守りで形勢をひっくり返す一手を見せられると、一瞬でその人が強いことを納得させられます。

A級棋士の山崎八段さえも感心した一手が飛び出した本局は、出口五段の好調ぶりを伺わせる一局だったように思います。


AIの形勢評価


第71回NHK杯1回戦第3局
※青色はGPSfish、赤色は水匠3
※AIの判断が正しいわけではありません。

トーナメント表


第71回NHK杯20210418


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コメント
  • 2021/04/19 10:32
    お疲れ様です。

    やはり後手が△3三飛車と打った手ですね。書かれていたとおり、飛車は攻めに使いたいです。自陣で且つあの場面で、3三のようなずい分狭いところに飛車を打つとは・・・。それに駒の効きも重なって、筋的に重い感じもありましたが、本局では好手だったのですね。
    出口五段は、その後も持ち駒の金で崩された居飛車穴熊の修復も見事でした。
  • 2021/04/19 19:01
    本局は△3三飛車打が解説者も対局相手も意表を突かれた最高の好手だったみたいですね。金3枚で固めた穴熊はもはや不敗の布陣ですごかったですよね。そうなる少し前に、126手△22金打は指さない旨を山崎八段が解説した矢先に、出口五段がそれを指したのは、番組中で笑いを誘ったワンシーンでしたが、結果的にはその一手が勝ちを確実にしていったいい手だったような気もします。
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