対応機種 | PlayStation2 |
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発売元 | セタ |
発売日 | 2001年2月22日 |
最高棋力 | 激指15の初段+【77分/121手】 |
特記事項 | ・セタが発売した最後の将棋ソフト ・谷川九段の棋譜を収録 ・谷川九段作の詰将棋を収録 ・思考エンジンは金沢将棋 |
※【】内は32局行った際の1局における消費時間と手数の平均
目次
光速谷川将棋とは
光速谷川将棋はセタが発売した最後の将棋ソフト。2001年2月にPlayStation2用のソフトとして発売されました。(セタは2004年にゲーム事業から撤退)
思考エンジンには当時の強豪プログラム「金沢将棋」が搭載されており、谷川九段のタイトル戦の棋譜や、谷川九段が創作した詰将棋問題(30題)も収録されています。
金沢将棋の世界コンピュータ将棋選手権での順位は、第10回大会(2000年3月)が4位、第11回大会(2001年3月)が2位でした。
主な機能
「対局室」COMのレベルは6段階。時間設定、局面編集、駒落ち、COM同士の対戦も可
「将棋大会」勝ち抜くことで総勢13名の得意戦法が異なる3Dキャラと対戦出来る
「詰将棋道場」谷川九段作の詰将棋30題収録。詰将棋を作ってCOMに解かせることも可
「鑑賞室」谷川九段のタイトル戦の棋譜や秘蔵の至龍の駒を鑑賞できる
「環境設定」盤駒や背景、読上げやBGMの有無などを設定出来る
光速谷川将棋の棋力
棋力の検証
私が光速谷川将棋を強い、強くないと言っても私以外の人には通じませんので、客観性を重視して、光速谷川将棋の最強レベル(LEVEL6)と激指15を対戦させてみました。
対激指15の二段+ → 谷川将棋の1勝7敗【約78分/123手】
対激指15の二段 → 谷川将棋の3勝5敗【約80分/120手】
対激指15の初段+ → 谷川将棋の5勝3敗【約73分/116手】
対激指15の初段 → 谷川将棋の2勝6敗【約77分/127手】
時間面の最長は138分22秒(195手)、最短は37分57秒(86手)
※【】内は消費時間と手数の1局平均
激指15の初段には負け越しているのですが、初段+には勝ち越し、二段とも良い勝負。
初段、初段+、二段との対戦だけを見ると、初段相当と認定した柿木将棋4が7勝16敗1分だったのに対して、光速谷川将棋は10勝14敗。両者の関係はイロレーティングで約80点差であり、これらを鑑みると光速谷川将棋のレベル6は激指15の初段+相当と考えるのが妥当。
序にこのゲームで最弱のLEVEL1についても、激指15を使ってその棋力を検証しました。1200点(4級)スタートで、レーティング戦50局を闘わせた結果は下の通り。

※画像は激指15のもの
対3級 → 0勝3敗(勝率0.000)
対4級 → 10勝16敗(勝率0.385)
対5級 → 16勝5敗(勝率0.762)
最終レート → 1220点(4級)
最高レート → 1220点(4級、50局目で到達)
上の結果から、最弱のLEVEL1でも激指15の4級相当の棋力であることが分かりました。
気付いたこと
●LEVEL6は初手から時間を使う
LEVEL6は初手から10数秒を使います。取る一手とか、詰み手順に入っている時以外は即指しすることはありません。駒がぶつかるまでは1手10数秒、駒がぶつかるとさらに時間を使います。終盤になるともっと時間を使うのですが、1手にせいぜい2分程度です。
●定跡をほとんど知らない?
定跡又はそれに類似した形を指すようです。例えば飛車を振った時は美濃に囲った後に高美濃を目指しますし、対抗形で居飛車の時は舟囲いを目指します。矢倉も築きますし、相掛かりや横歩取りも最初の10手くらいは定跡通りに指します。
しかし、定跡手順を指す際は他のソフトのように1手1秒ではなく時間を使い、横歩取りの際は先手番で先に横歩を取ることはありません。対抗形も定跡形と似た形を指しますが、定跡手順を暗記している感じではなく、初段くらいの人が工夫しながら指しているという序盤なのです。
●19手詰め以下は即詰ましてくる
対局中に17手詰め、19手詰めが現れると、1秒で見つけて詰ますところを幾度か確認しました。その一方で21手詰めを見逃したところも確認しました。
詰将棋道場について
谷川九段創作の詰将棋作品が初級問題、中級問題、上級問題に分けられ各10題ずつ収録されています。谷川九段が過去に詰パラなどで発表した作品や、このゲームのために創作した作品が並んでいます。
私(将棋倶楽部24の二段、将棋クエスト10分の四段)の回答結果は下の通り。
項目 | 手数 | 平均時間 | 正解率 |
---|---|---|---|
初級問題 | 5手 | 2分21秒 | 90.0% |
中級問題 | 7~11手 | 17分42秒 | 100.0% |
上級問題 | 13~19手 | 33分0秒 | 100.0% |
TOTAL | 5~19手 | 17分40秒 | 96.7% |
谷川九段は永世名人で、詰将棋の創作に関しても定評があります。したがって、その作品は手数の割にとても難しいものも多いのはある意味必然。
上級問題は第1問こそ簡単ですが、他は詰将棋解答選手権一般戦の最後の問題か、その前の問題くらいの難度の作品がズラッと並んでいます。谷川九段の著書である「光速の詰将棋」に掲載されているものも数題あって、いずれも四段クラス、五段クラスの目安になっていました。(中級問題の方は三段クラス)
私にとっては第9問が、五段クラスの問題よりも難しく、正解を発見するまでに約90分ほど掛かりました。
コンピュータとの対戦詰将棋の形式になっていて、こちらが攻め方を持つわけですが、時々、指した直後に谷川九段の声で「はい、そうです」とか「その手は~~」と話しかけてきて、こちらのボルテージを上げてくれます。詰将棋を解く際にそういう趣向に遭遇したのは初めてで、喜びました。
ところで初級問題第2問は解答解説の最初に書かれている不詰の一手を指しても、コンピュータは詰む方に逃げるので最終局面は頭銀で詰んでいます(不正解ですと言われますけど)
また、中級問題第3問では最終手を飛車不成にすると、「その手は~~」と一旦は否定しますが、すぐに「お見事です!」と訂正します。しょうもないバグ技ですが、昔のファミコン通信の禁断の秘技に応募したら、幾らかガバスを貰えたでしょうか?
それはともかく、上級問題は角の中合いや、大駒不成の連続技などを問うものがあったりして、詰将棋を好きな人ならば楽しめること請け合いです。逆に、全体的には難問集であるため、有段者でなければ解く気はしないかもしれません。
将棋大会について
将棋大会というモードは、最強羽生将棋にあった門下生大会をグレードアップさせたものです。
最初は俳句趣味なオヤジとしか対戦出来ません。対局に勝つことで次の対戦相手が現れ、総勢13名全員に勝つとパスワードが表示され、応募ハガキにそれを書いて応募すると、抽選で50名に谷川九段の直筆サイン色紙が当たったようです。(応募期間は平成13年7月31日で終了)
登場するキャラたちはポリゴンを使った3D画像で動き回ったり、しゃべったりして、プレステ2の性能を知らしめてくれるのですが、セリフの半分くらいは何と言ってるのか、聞き取り難いのが惜しいところ。
例えば巫女が「そくりょうさいそうっ!」と気合を込めて叫ぶのですが、それ何?って感じです。私が聞き取れないだけで違う言葉なのかもしれません。
それで、最初の俳句オヤジとの対局はなんと此方の四枚落ち下手。「な、なめとんのか?」とそんな言葉が頭を過ぎった次第。

その俳句オヤジ(松尾馬金)は投了後に「投了だ ああ投了だ 投了だ」と有名な「松島や~」をパロッた台詞を残すのですが、「それ、実は芭蕉の句じゃないのよね、、」とツッコミたくなったであります。
勝ち進むにしたがって、勝つのが難しい門下生が登場するわけですが、門下生によって得意戦型は異なり、三間飛車使いや、中飛車使いも現れたりして、この辺りは強さのレベルが変わるだけだった最強羽生将棋の門下生大会と比べて格段の進歩だと思います。
そして、ラストの3人は此方が駒落ち上手で、駒落ちをほとんど知らない私にとっては苦戦した難所でした。正直に書くと、全て初手合いを落とし、2戦目でクリアです。
最強羽生将棋の時は、ラスボスはユーザー側の角落ち上手でしたが、光速谷川将棋はユーザー側の二枚落ち上手。しかも、コンピュータは銀多伝に組んでくるため、私のように駒落ちをよく知らない人は、将棋倶楽部24の最高初段くらいの棋力がないと、クリアするのは厳しいかもしれません。
コンピュータの指し手の強さは、最強羽生将棋の時と大して変わらないと思います。光速谷川将棋の方は、1手長くてせいぜい10秒くらいで指していたので、LEVEL2辺りに設定されていると思います。
ともかく、この「将棋大会」のモードではどうやって倒そうかと久しぶりに作戦を練り、ゲームに熱中する時間がありました。繰り返しになりますが、各キャラが使う戦型に特色があり、よく出来ていると思いました。
総評

全体的なつくりはNINTENDO64の「最強羽生将棋」をグレードアップしたものと言えば的確でしょうか。
ただし、最強羽生将棋にあった初心者向けの講座はありません。完全に有段者向けの将棋ソフトです。
ユーザーの棋力によって評価は異なると思いますが、私はこの光速谷川将棋は発売された時点では、家庭用ゲーム機のソフトとしては最も優れた将棋ソフトだったのではないかと思いました。私がこれまで紹介してきた家庭用ゲーム機の将棋ソフトでは一番よく出来ています。
綺麗なグラフィックに加え、BGMはボサノバ調で耳に心地よく、谷川九段の画像がふんだんに使われていて、将棋ファンを魅了する雰囲気を作り出しています。
AIの棋力自体は、1年前に発売されている柿木将棋4とさほどの違いはないのですが、どちらも最近になって初めて遊んだ私にとっては、光速谷川将棋の方が遥かに優れた作品に思えました。
将棋ソフトがユーザーに与える満足度というものは、思考エンジン以外の部分もかなり重要であることを確信しました。
やっぱりTVゲームは、グラフィック面やサウンド面、および遊び心(このソフトの場合は門下生道場)はとても重要だと思いました。
今も昔も将棋ソフトは思考エンジンのみに頼り切っているものが多く、このソフトのように演出で楽しませてくれるものが非常に少ないです。
セタはゲーム業界の中ではとりわけという程でもなかったと思うのですが(ファミコンで初めてバックアップカートリッジを作るなど技術は凄かった)、将棋ソフトを発売した会社の中では抜きん出ていたような気がします。
私の感覚だと、あと400点(2段)くらい強かったならば、今でも通用できる作品だったと思うのですが、このソフトの強さでも当時は最高に近い棋力だったわけですから、無理な注文でしょうか。
そのあたりはユーザーの棋力によって違った感想の出るところで、このソフトの強さで充分だという人の方が多数派であることも考えられるところ。
なお、LEVEL6と何局か指したのですが、決して私が弱いと言えるような相手では無かったことも書いておきます。弱いどころか手古摺りました。しかし、一局80分ほど考えるので、そういう相手とは滅多なことでは対局したいという気が起こらないことも事実。
それで、私の感覚では激指15の初段+よりも強い気もしたのですが、そのあたりは、遊ぶ人の得意戦型によって、強く感じたり、弱く感じたりするのかもしれません。(私の得意は中飛車)
激指15との対戦を見ていると、横歩取りや矢倉になると、光速谷川将棋はかなり分が悪くなっていたようで、居飛車を好きな人が指すとまた別の感想が出て来るかもしれません。
最後に余計なことかもしれませんが、棋譜は昭和62年から平成11年までの谷川九段が出場したタイトル戦の棋譜が収録されているわけですが、それ以前のものが収録されていないのは何故でしょう?多くの人は、谷川九段が史上最年少で名人位を奪取した時の名人戦の棋譜を見たかったと思うのですけど。
それはともかく、PlayStation2の性能を遺憾なく発揮した、将棋ソフトの傑作だったのではないかと思います。
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