森田将棋(ファミリーコンピュータ)

将棋ソフト
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対応機種ファミリーコンピュータ
発売元セタ
発売日1987年4月14日
最高棋力激指15の8級【116分/115手】
特記事項・日本将棋連盟認定 総合棋力2級
・ファミコン初のバッテリーバックアップ機能搭載ROM
・1~10級を取得出来た(受付期間終了)

※【】内は31局行った際の1局における消費時間と手数の平均

目次

森田将棋とは


当時、コンピュータ史上最強といわれたパソコン版将棋ソフト「森田和郎の将棋」をさらにグレードアップしてファミコン用ソフトとして移植したもの。

パッケージに同梱されている級位申請書に森田将棋に勝った対局棋譜を書いて申し込むと(申請料2000円)、棋力に見合った問題が送られてきて、解答を送り返すと級位を取得することが出来た。


主な機能


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「対局」COMの棋力はL1~L3までの三段階。人間同士、コンピュータ同士の対局も可能
「再現」対局直後の棋譜を再現したり、途中で指し継ぐことも出来る
「盤面」駒落ち開始局面など好きな局面を作って、COMと指し継ぐことが出来る
「詰め」詰将棋問題を盤面に並べてCOMに解かせることが出来る

※待ったボタンは無いが中断→棋譜再現で2手戻す→対局で、実質、待ったは可能

※バッテリーバックアップ機能を搭載しており、対局中の棋譜を保存することが可能。ただし、カセットに内蔵されている電池が生きている場合に限る。

※「詰め」に関しては、谷川九段作の難問集「光速の詰将棋」からランダムにピックアップして9手詰(第29問)は10分41秒で解いたが、11手詰(第55問)、13手詰(第73問)は30分掛けても解図不能。


森田将棋の棋力


棋力の検証


森田将棋の棋力ですが、私が強いとか強くないと言っても私にしか通じませんので、誰でも分かるように、激指15と対戦させてみました。森田将棋の方は最高棋力である「L3」で対戦させました。

■対戦結果
対激指15の10級 → 森田将棋の7勝1敗【約155分/124手】
対激指15の9級 → 森田将棋の4勝3敗1分【約100分/108手】
対激指15の8級 → 森田将棋の4勝4敗【約124分/123手】
対激指15の7級 → 森田将棋の2勝6敗【約84分/103手】
※【】内は1局における消費時間と手数の平均。引分局は除外。


時間面での最長は331分51秒(252手)、最短は12分37秒(31手)

最短の方は激指10級がそれで勝ってました。

最長の方ですが、本当にそんなに時間が掛かるのかと思う人もいらっしゃるかもしれませんので、その時の画像を下の方に添付しておきます。

引分局を除外して、平均を出すと1局平均116分(115手)になります。

これらの結果より、森田将棋L3の棋力は激指15の8級相当であることが分かります。

昔、何かでユーザーが「1手30分考えやがる」等と書いているのを拝見したこともありますが、終盤で1手に5分や10分を使うのは常でも、20分以上を使うのは見ませんでした。


最弱の「L1」の方もどのくらいの棋力があるのかを確認すべく、こちらは長くとも1手20秒弱しか考えませんので、激指15のレーティング戦で対局させてみました。

12級(400点)スタートで50局を対戦させた結果は下の通り。

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※画像は激指15のもの

対9級 → 0勝1敗0分(勝率0.000)
対10級 → 6勝10敗3分(勝率0.375)
対11級 → 13勝3敗0分(勝率0.813)
対12級 → 9勝4敗1分(勝率0.692)

最終レート 574点(10級)
最高レート 620点(10級 45局目で到達)

上の結果から、L1の棋力は激指15の10級相当だと考えられます。


気付いたこと


定跡手順を認識している
メジャー戦型の定跡手順を少しばかり認識しており、ユーザーがその分岐にある手を指すと、森田将棋は0秒で定跡手を返してきます。但し分岐は少ないとも言える量で、手順は長くとも30手弱。激指15との戦いでは、数手からせいぜい十数手で森田将棋にとっては定跡外となり、熟慮してました。

5手詰め以下は確実に詰ます
レベル3は5手詰め以下を確実に詰ますようです。7手詰めも詰ましていましたが、見逃すことも多かったです。なお、レベル1は3手詰め以下だと確実に詰ましていました。

詰み上がる前に投了する
上に書いたことと関連しますが、レベル3は5手詰め以下ならば確実に読み切る自信があるのか、自玉が残り4手で詰み上がる状況になると、高確率で投了していました。レベル1の方は自玉が残り2手で詰み上がる状況になると、高確率で投了していました。

また、王手する手段がなくなり且つ自玉が必至という状況でも投了することがありました。投了することを知っているのは、この時代のソフトとしては稀。

千日手は引き分けにならない
千日手引分の認識はなく、おそらくは、電気とユーザー側の気力が続く限り、同じ局面が何回現れようとも、コンピュータはユーザーが音を上げるまで同じ手順を繰り返してきます。もっとも、コンピュータが千日手引分を認識するようになったのは、このソフトの登場から10年くらい先の話です。


総評


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私がこのソフトを初めて見たのは、30年くらい前に友人の家でのことです。その時は、このソフトと対戦したかどうかは覚えてないのですが、このソフトを使って、その友人と対局した記憶はあります。

対局画面は固定画面で、人間同士で遊ぶ際は後手は常に上から見下ろす見辛い形で、先手番だった私は盤面を見易い利があったのか、その時の対局は私の大勝利!

そういう思い出のあるソフトですが、コンピュータと遊んだのは今回が初めて。

まず最初に出て来た感想は、時代やマシンの性能を考慮しても、前作「内藤九段将棋秘伝」と比べてさえ、ビジュアル面においては無風流だということです。画像は真っ暗で味気ないタイトル画面と、対局画面の2種類しかありません。

まあ、将棋ソフトは他のファミコンソフトとは違って、目には見えないAIで勝負する特殊なジャンルなので、そこら辺については負けておくことにします。

それで強さの方ですが、こちらは私が予想していたよりも遥かに強い!

勿論、強いとは言っても級位レベルですが、前作「内藤九段将棋秘伝」と比べると格段に強くなっています。(内藤九段将棋秘伝も製作は森田和郎氏のランダムハウス)

パッケージに表に「日本将棋連盟認定 総合棋力2級」と書かれていて、このソフトの数年後に発売されたSFCソフト「早指し二段森田将棋」がどう考えても二段の棋力が無いことを知っていた私は、このソフトも2級の棋力はないのだろうと予想していたのですが、遊んでみるとこちらは2級でも良さそうなレベル。

定跡を少しは認識していますし、定跡から外れると変な手をさすのですが、終盤は5手詰め以下ならば確実に詰ますという芸当は有段でも油断のならない手際。(もっとも7手詰めを外したり、9手以上は解けないことを考慮すると詰将棋力は初段くらいが妥当?)

原始棒銀は炸裂しますが、竜を作ることが出来ても、その後の陣形の立て直しはなかなかのもので、初手合いだとそこから畳み掛けて攻めるのは苦労するはず。

そもそも、アマチュアの級位には何の規定もないので、日本将棋連盟が2級を公認したのならば、我々末端の将棋ファンはそういうものだと思うほかありません。

私が実際に指してみた感覚では、初手合いの時は意外に頑張る印象もあって、将棋倶楽部24で10級もあれば連盟の段級位認定問題を解いて初段くらいはなれるのだから、このソフトが2級を公認されたとしても、何の不思議もないというテキトーな結論が出ました。

このソフトの最大の弱点はコンピュータの考慮時間の長さですが、その点を補うためにセタがバッテリーバックアップカートリッジを発明したというのは本当に凄い。(※長過ぎる対局を指し掛けとして、中断して保存することが可能)

バッテリーバックアップカートリッジとは、ゲームカセット側にセーブするための装置(電池式)を内蔵したものですが、その発明により例えばドラクエシリーズにおいてはあのおぞましい復活の呪文を書き留めたり、入力する手間を省くことが可能になりました。

ファミコン界におけるあの偉大な発明が将棋ソフトで始まったというのは、どういうわけか、将棋ファンとして誇らしい気持ちにさえなります(笑)

ただし、そのセーブ機能がこの森田将棋における消費時間が長過ぎてユーザーを困らせる状況を解消出来ていたのかどうかは謎です(不満の声は幾度となく見た)。

なお、その長過ぎる考慮時間もレトロフリークで動かしたならば、オーバークロック機能を使って約4分の1にカットすることが出来ます。私が実際に試したところ、オーバークロック機能を使っても使わなくても手順は変わらず、画面上に表示される消費時間も全く同じでした。

あと、このソフトは将棋ソフトにおける基本機能の多くを既に備えていたことには驚きさえありました。例えば、棋譜再現機能がありますし、対局者の消費時間の表示もあります。盤面編集機能もあれば、詰将棋問題を解く機能もあります。COM同士の対局すら可能です。

勿論、現在必要不可欠となっている検討モードや棋譜解析機能、対局盤面の詰み探索は備わってないのですが、それらはAIがもっと強くないと存在してもあまり役立たないので、この時代でも技術的に可能且つ有意義なことで備わってないのは対局時間の設定と盤面反転くらいでしょうか?

1987年4月の段階で、将棋ソフトの基本機能をここまで完成させていたのは驚きでした。

一方で短所もあって、繰り返し述べている最強レベルの長過ぎる消費時間についてですが、2時間くらいは許容範囲と線引きしたのはこのソフトから始まったのではないかと思われるくらい、プレステ版も任天堂64版も森田将棋の最強レベルは2時間くらいを使いますし、後発の他のソフトまでが右に倣えと言わんばかりに最強レベルは2時間くらいを使います。

如何に考えることを好む将棋ファンといえども、コンピュータに長く考えられると暇を持て余します。長くとも1時間くらいを許容範囲として線引きできなかったのだろうかとは思いました。指し手の強さは大して変わらないのですから。

いろいろ書きましたが、全体的には1987年4月の段階で発売された将棋ソフトとしては傑作だと思います。

もちろん今となっては、棋力がこのソフトと近い人以外はこのソフトで遊ぶ理由はほとんど無いと思います。しかし、、私は今回このソフトで初めて遊び、森田和郎氏が将棋ソフトの偉大なプログラマーであり、優れた製作者であることを今まで以上に理解した気がしました。

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