月下の棋士 -王竜戦-(PlayStation)

将棋ソフト
新 刊

新 刊

gekka1.jpg

対応機種PlayStation
発売元バンプレスト
発売日1996年9月13日
最高棋力激指15の8級【47分/126手】
特記事項・漫画「月下の棋士」のキャラが多数登場
・登場人物の声に豪華声優陣を起用

※【】内は16局行った際の1局における消費時間と手数の平均

目次

月下の棋士 -王竜戦-とは


原作「月下の棋士」の世界を豪華声優陣と、セル画使用により、臨場感溢れる対局を再現!キャラクターごとに異なる戦型や、豊富な設定項目。もちろん本格的な思考ルーチンを搭載!

商品ケース裏面より引用

主な機能


gekka2.jpg

「王竜戦編」勝ち抜き戦で滝川名人との対局を目指す。
「じっちゃん修行編」COMとの対局。レベルは五段階。駒落ちや戦型指定も可能。
「定跡などない!編」保存しておいた棋譜を読み込むことが出来る。
「宿命の対決編」ゲーム盤面を使って人間同士の対局が出来る。

月下の棋士の棋力


棋力の検証


私がこのゲームのAIを強い、弱いと言っても私以外の人には通じないので、誰でもわかるように、客観性を重視して、激指15と対戦させてみました。

月下の棋士の方は王竜戦のラストボスである滝川幸治で対戦させました。

対戦結果
対激指15の7級 → 滝川幸治の2勝6敗【約59分/139手】
対激指15の8級 → 滝川幸治の6勝2敗【約30分/114手】
※【】内は1局における消費時間と手数の平均。


時間面での最長は約99分(227手)、最短は約4分(54手)でした。

上の結果より、月下の棋士の最強キャラである滝川幸治の棋力は、激指15の8級程度ということになりそうです。

次に「じっちゃん修行編」の最強レベルであるLv5についても調べてみました。

対戦結果
対激指15の8級 → じっちゃんLv5の2勝6敗【約13分/103手】
対激指15の9級 → じっちゃんLv5の5勝3敗【約21分/137手】
※【】内は1局における消費時間と手数の平均。


此方の方は激指15の9級程度ということでしょうか。

王竜戦を勝ち抜かないと対戦できない滝川幸治を最初から対戦できるじっちゃんLv5よりも強く設定していたというのは、なかなか粋な計らい。


気付いたこと


9手詰め以下は確実に詰ます
Lv5や滝川幸治は、ユーザー側の玉が9手詰め以下になると確実に詰ますようです。11手詰めになるとあやしく、そういう局面が2度出現したうち、1度は1分30秒を使って詰ましましたが、他の1回は見逃しました。

定跡手順を認識している
定跡手順をある程度知っていて、長い時は40手くらいまで認識していることもあり、それを確認できた戦型がひねり飛車だった時は、当時の流行が伝わってきました。それはともかく、認識している分岐は多くはないのですが、それでも棋力の割には定跡通だと思います。勿論、認識しているのは古い定跡で、相振り飛車には対応していないようです。

敗勢になると長考する
このゲームのAIは最強レベルであっても、駒がぶつかってもしばらくの間はサクサクと指すのですが、自らが敗勢になると一手一手が長くなります。不利になったらではなく、敗勢になったらとあえて強調しておきます。特に滝川幸治は一手10分くらいを考えることも度々見られました。(そして、指した一手が無駄に駒を捨てるだけの王手なんてことも・・。)

大駒を簡単に捕獲されるところに打つ
簡単に捕まるところに駒台の大駒を打つことが度々あります。定跡はなかなか知ってるし、詰将棋力はなかなかのものだし、鋭い手も時々指してくるのですが、大駒をタダでプレゼントするような大ポカも結構やるため、強いのか弱いのか、まあ、強いとは言い難い気はします。


総評


私がこのゲームを購入したのは、発売からそれほど経ってない頃だったと思います。

当時の私の棋力は、まだ存在しなかった将棋倶楽部24で例えると、10級以下だったことは確実で、12級前後くらいだったのではないでしょうか。

それでも、このソフトの王竜戦で苦戦した記憶はなく、エンディングまで辿り着いたことも記憶しています。

当時の私はプレイステーションの将棋ソフトが発売されるとそのほとんどを買っていたのですが、このソフトに対しては特に不満もなければ、大満足したという覚えもありません。

そして、これまでに50本ほど購入した将棋ソフトの中でも10指に入るくらいの記憶に残るような将棋ソフトだったような気もします。そのあたりは、私が漫画「月下の棋士」を好きだったことも影響しているのかもしれません。

このゲームは漫画「月下の棋士」のセル画をたくさん使用していて、登場人物の声もとてもマッチしており、何パターンかあるBGMもどれもがいちいち格好良く、「月下の棋士」の世界を再現していることは間違いありません。

AIがあまり強くないという意見もあるようですが、私自身は当時からキャラクターものを得意とするバンプレストが発売しているゲームなので、そんなコテコテの将棋ゲームを出すはずがないと割り切っていたためか、その点に関しては何も気になることはありませんでした。

むしろ、当時の私の棋力だとストレスなくゲーム(王竜戦)を進行させることが出来るちょうどいいくらいの相手でした。

AIの棋力は、日本将棋連盟が2級を公認したファミコンの「森田将棋」と互角か、それよりもちょっとだけ強いくらいなので、これ以上強くしても年季の入った将棋ファンしか勝てなくなり、製作者がユーザーを楽しませようと用意した画像や音声を、観たり聞いたりすることが出来ない購入者が続出しそうです。

つまり、このゲームはキャラクターもので、キャラ画像やその声が最もな魅力なのだから、強さはこのくらいでちょうど良いのではないかと思いました。

今回久しぶりに遊んでみて、一点だけ惜しいと思ったのは対局で使われる盤面も着手音も良いのですが、肝心の駒の見た目がショボいことです。まるで携帯用のマグネット将棋の駒なのです・・。

何かで読んだのですが、当時のゲーム画像においては、絵として文字を描くことは難しいことらしく、慥かにこの時代くらいまでの将棋ゲームの駒はどれもが現実の高級駒とはかけ離れた見た目なのですから、仕方のないことだとは理解出来ます。

しかし、キャラ画像や音声はカッコいいのに、駒の画像だけがショボいことは、パッケージ裏に書かれてある「臨場感溢れる対局を再現!」という意味においては、何か違うという感想が出てくるのは否めませんでした。

ついでにもう一点。カッコいい声優陣の声は、ある条件を満たすと発動するように作られていて、その条件のひとつが王手を初めて掛けることですが、此方が一方的に攻め勝つ展開になると、そのとっておきのカッコいい台詞を無駄な王手ラッシュ(COMが負けを認めた時にやる行動)開始時に発動するのだから締まりません。

例えば、COM玉必至・ユーザー玉詰み無しの局面で、明らかに継続手のない、単に大駒を捨てるだけの王手(いわゆる水平線効果)を掛けながら「これが刈田升三の将棋じゃ!」とか言われても、「え?これが?」とクスクス笑うしかないわけです。

もし、このゲームと互角以下の棋力の人が遊んだならば、カッコよい台詞もそれに合ったタイミングで発動されるのかもしれませんが、私が遊ぶと相手キャラの全てが、彼らの置かれている状況とは似つかわしくない台詞を吐いていて、滑稽にすら見えてしまったというのが正直な感想。

なお、台詞の方は原作に出てきたものが使われていて、原作を読んでないと意味不明なものも幾つかあると思います。(例えば刈田升三の「ピースはまだか」は、全盛期時代に戻るために禁煙していたタバコを早く持って来いというシチュエーション)

いろいろ書きましたが、発売当時に定価で購入した私は当時から何の不満もなく、25年も前のことなのに、遊んだ記憶すら残っている印象深いゲームのひとつ。家に来た友達が喜んで遊んでいた記憶もあります。

登場人物の声は誰も彼もがピッタリで、その方面に詳しい人の話によるとかなり豪華らしく、原作を好きな人ならば遊んでみる価値はあると思います。

ところで、今回遊んでいたら「じっちゃん修行編」の御神三吉が初手▲96歩を指したことがあり(滅多にない?)、これを意図的に指すようにプログラムしていたのであれば、制作スタッフのセンスはなかなかのもの。

初手端歩突きは主人公の氷室が御神三吉から受け継いだ作品中における重要な一手で、他のキャラも指すのかどうかはわかりませんが(今回の検証では見なかった)、「じっちゃん修行編」の御神三吉がそれを指した時には感動すら覚えました。

関連記事
記事タイトルとURLをコピーする

コメント
コメント投稿

トラックバック