
対応機種 | Windows |
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開発者 | 平岡拓也 |
公開日 | 2016年8月20日 |
最高棋力 | 激指15の七段【5483KN/sec×9秒】 |
特記事項 | ・電王戦FINAL第1局に登場したソフト |
※対局の際のやねうら王のNPSは初手▲18香の局面で5483KN/sec
目次
apery_denousen_finalとは
apery_denousen_finalとは、平岡拓也氏が開発した将棋プログラム「Apery(エイプリー)」の電王戦FINAL出場バージョン。2014年11月に行われた第2回将棋電王トーナメントで5位になったことで、2015年春に開催される電王戦に出場することとなった。
なお、Aperyは2014年5月に行われた第24回世界コンピュータ将棋選手権では優勝している。
主な機能
将棋を指すだけのプログラムなので、機能はそれを動かすアプリ「将棋所」や「将棋GUI」に付いている機能となる。それらを使えば検討モードや棋譜解析機能など将棋研究に必要なものは一通りそろっている。
2022年5月現在、今でも無料でダウンロードできる。ダウンロードファイルの中に複数の実行ファイルが梱包されており、電王戦で使用したものと同じものも入っているが(アプリ名はapery_denousen_final)、それを実行するとパソコンがぶち壊れたかと思うほどに超絶重くなるので、並のパソコンで動かす際は他の実行ファイルを使用する事をお勧めする。
参考までに電王戦では、CPUはCore i7 5960X、メモリは64GB搭載のパソコンで動かしていたそうです。
apery_denousen_finalの棋力
棋力の検証
Aperyの電王戦FINALバージョンがどのくらいの強さなのかを知るために、激指15のレーティング戦で闘わせてみました。
※Aperyの持ち時間は1手9秒(NPSは初手▲18香の局面で5483KN/sec)
※使用した実行ファイルはapery_bmi2.exe
2500点(五段)スタート

最高レート 2869点(七段+)
最終レート 2869点(七段+)
対七段+ 3勝8敗0分(勝率 0.273)
対七段 17勝12敗1分(勝率 0.586)
対六段+ 20勝8敗0分(勝率 0.714)
対六段 10勝4敗1分(勝率 0.714)
対五段+ 10勝1敗0分(勝率 0.909)
対五段 4勝1敗0分(勝率 0.800)
最後に白星が集まり最高レート更新中ですが、七段+に停滞したのは最後の2局のみで、上の対戦成績からもapery_denousen_finalの棋力は激指15の七段相当とするのが妥当だと思われます。
しかし、Aperyは第24回世界コンピュータ将棋選手権の優勝ソフトで、その前年に公開されているGPSfishと同じくらいの強さというのも変だと思い、持ち時間1手1秒で100局を自動対戦させてみました。

GPSfishの49勝、Aperyの48勝、3引分とほとんど互角の成績でした。持ち時間が1秒(実質0.5秒)で探索局面数もすくないので飽くまでも参考資料です。
なお、激指15R戦100局での対局後R平均は、Apery(2709)>GPSfish(2670)となっています。
なんにしてもAperyとGPSfishの棋力差は明かというほどでもなく、互角に近いと言えないこともなさそうです。
気付いたこと
●詰みにそれほど強くない?
上の実験で激指五段+に負けていますが、自玉の21手詰に気付かず頓死したという内容でした。他にもⅠ7手詰に気付かずに頓死したという対局もありました。その21手詰めの局面を検討させても発見に1分くらいかかってましたが、技巧で検討させても似たような状況だったので、Aperyが詰みに強くないのではなく、激指15が詰みに異常に強いという説はあります。
●無類の穴熊好き
当時の将棋ソフトはどれもこれもが穴熊を好きでしたが、Aperyの穴熊好きはその中でも格別です。対抗形になると超高確率で穴熊を目指します。相振り飛車でも勿論穴熊。

まだ玉が3八にいる段階で▲1八香とするのは平常運転で、上の図のように玉が4八にいる時さえ▲1八香を指すことや、居飛車穴熊の時はまだ8八に角が居る時に▲9八香とやったりします。こういうソフトは初めて見ました。加えて、普通の穴熊を好きなだけでなく、それを銀冠穴熊に組み替えることも知ってます。これがApery電王戦FINAL版の最もな特徴だと思います。
●評価値2000は頻繁に逆転する
Aperyが自らを2000点リードとする局面は頻繁にひっくり返ってました。楽観的というか何なのか。研究用に向いているソフトとは思いません。
●定跡手順は20手弱まで
人類が作った定跡手順を一通り把握しているようですが、認識しているのは大抵が20手弱まで。例えば横歩取りにおいては▲34飛と横歩を取る手を自力で考えていたのは印象的でした。人類が作った定跡を使いつつもその手順は短めにするのが当時のコンピュータ将棋界の流行だったような記憶があります。
●千日手は50
将棋所や将棋GUIで動かすことのできる将棋ソフトは千日手が有力になると大抵はその評価値が-1になりますが、apery_denousen_finalは50になるようです。比較的どうでもいいことではあります。
総評

このソフトのスゴイところは何といってもプロ棋士と戦ったバージョンそのものであること。
プロ棋士と戦った将棋ソフトと全く同じものを一般人が手に入れることができるのはAperyだけ。(もっとも斎藤先生と戦ったものと全く同じものを再現するためには、パソコンも同じ能力のものを用意する必要はあります。)
また、Aperyは30年以上の歴史がある世界コンピュータ将棋選手権の現在15しかない優勝ソフトのひとつ。
当然ながら、将棋ソフトマニアとしては興味を持つべきソフトだったりします。
この段階ではまだ人間に勝てるチャンスは有ったとはいえ、斎藤先生はよくこれに一発勝負で勝てたなとただただその強さに驚きです。
何度も対局してたら勝てるようになるくらいに思っている人は、無料でダウンロードできますので試してみて下さい。それが妄想から起こる戯言であったことに気付くことでしょう。
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