◆トーナメント表

開幕戦は都成竜馬七段vs増田康宏七段。都成七段といえば名前が全て将棋に関係があることと、師匠が谷川十七世名人であること。増田七段といえばデビュー当時にマイナビのインタビューで「矢倉は終わった」と答えられて将棋界に一大センセーションを巻き起こされたこと。増田七段のデビュー前に比べると矢倉が激減しているのは事実。
都成七段は中飛車を得意とするらしいので、ひょっとすると開幕戦で中飛車を観れるかもしれません。解説は青嶋未来六段ですが、その段位を見た時、対局者よりもプロデビューが早く、デビュー当時から注目されていた棋士だけに意外でした。
さて、Aブロックの上半分ですが、ここは藤井NHK杯がいらっしゃるので、他の先生にとりましては来期シード権獲得条件の「ベスト4以上」を勝ち取るという意味においては最難関ブロック。個人的に最も注目する対局は紅一点の里見香奈女流五冠の対局。その初戦の相手は船江恒平六段。
船江六段といえば第2回電王戦でツツカナと戦ったのが印象的。あの対局、時間があれば船江六段が勝ってたんですよね。異を唱えるのはコンピュータを崇拝してる人と将棋初心者ばかりなので、理解してもらうのは不可能に近かったのですが、あれからコンピュータさんも比較にならないほど強くなったので、その形勢評価グラフを示せば、少しは理解されるのでしょうか。
◆水匠5の形勢評価グラフ

▲船江六段、△ツツカナ、評価値の先手側最大値は1500以上
それはともかく、里見女流五冠と船江六段は2011年に加古川清流戦で対戦されているようですが、その時は船江六段が勝っているようです。しかし、それから10年以上の月日は流れ、両者の将棋は全く別物になっているはず。個人的には船江六段の女性相手の戦い難さや両対局者の実力等を考えると、どちらが勝つかは五分五分だと思っています。放送日は4月30日、全将棋ファン必見!
次にAブロック下半分ですが、ここは永瀬王座、羽生九段、豊島九段、菅井八段、広瀬八段、中村八段と永世七冠とA級棋士4名がひしめく大激戦区。個人的には羽生九段の全対局に注目しているところですが、不思議だったのは、名誉NHK杯で永世七冠の羽生九段が1回戦から対局するのは何故でしょう?
規定によると、前期ベスト4、タイトル保持者、A級棋士、永世称号呼称者、B級1組の棋士、一般棋戦優勝者、女流タイトル保持者、成績優秀者という順で本戦シード32名及び、2回戦から出場14名が決まるとのこと。
羽生九段は確かに永世称号をまだ名乗って無いのですが、名誉NHK杯は本棋戦のスーパービッグな称号で、名乗る名乗らないは無いわけですから、予選免除という特典だけになっていることについては、妙にあの流行語「ちーがーうーだろっ」が頭の中を駆け巡った次第。
続いて、Bブロック上半分。ここは上のブロックは若い先生が中心で、下のブロックはベテランの先生が中心になっています。もちろん、このブロックで最有力は渡辺名人。名人と親しいことで知られる佐藤天彦九段も同じブロックに居て、対局が実現するのかも見所のひとつ。
だいぶ前ですが、御二方がネット将棋を通じて仲良くなったことは動画中継で公言されていました。実は2003年頃、某将棋サイトで両先生だと頻繁に噂されていたIDがありまして、名人は当時四~五段で、佐藤九段はまだ奨励会員だったのですが、渡辺先生だと噂されていたIDは伝説になった「デクシ」さんと勝ったり負けたりのいい勝負だったこともあり、勝手に噂は本当だったのだろうと思い込んでいたりします。
そのIDが本当に両先生だったのかはご本人しか分からない謎ですが、本当だと信じている者にとっては御二方が揃うと妙に20年前のセピア色になった思い出がよみがえって来て、懐かしい気持ちに目を細めていまったりします(汗)
一方で、そのブロックでは実は藤井猛九段vs屋敷九段がオールドファンの私にとっては最も興味深い対局。隣の山には郷田九段もいらっしゃって、最強世代が存在を大きく示すのか否かも注目ポイント。
最後にBブロックの下半分ですが、ここはオールドファンの私にとっては十七世名人の名前が輝いて見えるブロック。若い先生と対局することになるのですが、どのような指しまわしを見せてくれるのか。
このブロックは他の3つに比べると、棋士の実力はもっとも拮抗しているように見えます。くどいようですが、私はオールドファンなので丸山先生と佐藤会長の活躍にも期待していたりします。15年まえならば上位になるのは余裕だった先生方ですが、50歳の大台を超えて、指し盛りの先生方とどのように戦うのかが大変興味深かったりします。
以上が、トーナメント表を見て、ざっと考えた事柄です。
NHK杯テレビ将棋トーナメントは対局がメインの番組ですが、司会の先生と解説の先生のトークもとても楽しみな番組。司会の先生は鈴木環那女流三段と中村桃子女流二段とのこと。全将棋ファンにとって、毎週日曜日の10時30分からの1時間半は、今年も楽しい時間になること、まちがいありません。
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