
4月2日に第73回NHK杯テレビ将棋トーナメント1回戦 増田康宏七段vs都成竜馬七段が放送されました。
知った風なことを書きますと、段位というのは現在の実力を表すものではなく、過去の実績を表すものだったりします。何を言いたいのかと申しますと、段位だけではどちらが強いのかを知ることは困難だということです。例えば、引退されてる九段の先生よりもプロになったばかりの四段の先生の方が強いというのはよくあることです。
それで、両先生が最近はどのくらい活躍されているのかを少しばかり調べてみました。
増田七段
順位戦B級1組、竜王戦2組
昨年度 34勝13敗(勝率0.7234)
都成七段
順位戦C級1組、竜王戦1組
昨年度 24勝14敗(勝率0.6315)
順位戦B級1組(TOP23)と竜王戦1組(TOP17)で強いのはどっちだー?みたいなことになってるわけですが、昨年度の勝率から判断すると勢いは増田七段やや有利か?と言えないこともありません。対局を見終わって書くのもなんですけど・・(汗)
さて、対局は増田七段の先手で始まったのですが、都成七段の4手目△94歩は如何にも居飛車・振り飛車どちらも指せる方の揺さぶりという感じの味わい深い序盤の一手。
結局、後手の都成七段の三間飛車になったのですが、増田七段はエルも囲いで都成七段の方は居玉のまま美濃に組み上げる新時代と言いますか新感覚の対抗形。
これは見てる方ばかりでなく、対局者の先生方も新局面だったのか、序盤の27手で両先生とも持ち時間の10分を使い切ってました。
それで、増田七段が25手で▲45歩と歩をぶつけて機敏に仕掛けたのですが、その局面が本局の最大のテーマと言っても過言では無かったりします。都成七段もその対応がわからず、気がついたら悪くなっていたことを振り返っていたほどですから。
以降は角桂交換の駒損ながらも先に飛車を相手陣に打ち下ろして攻勢となっていた都成七段も指せそうな雰囲気にはなっていて、虎の子のと金が暴れる展開になれば都成七段も有望だったのですが、大盤でも、そして盤上でも、その虎の子のと金を消す小技63手▲29歩打が発見されると攻守が逆転して、大盤解説の雰囲気と画面上に表示されているソフトの形勢判断が一致して先手優勢。
対局後に増田七段もその小技63手▲29歩打の発見が印象に残った旨を話していたのですが、私も大盤解説の青嶋六段が指摘するほんの少し前に発見してました。(エッヘン)
その類の大駒に働きかけてくる相手の心を折る一手は、コンピュータが好きそうな手筋で、コンピュータ相手に優勢になったと喜ぶや否や心を折られた経験が生きたのかもしれません。何の役にも立ちませんけど。
ともかく、63手▲29歩打からは番組はほとんど増田七段の独り舞台。
都成七段が68手から△44同銀▲同馬△41香打と銀をくれてやる代わりに田楽指しの香打ちを見せる技を繰り出すも ―後手も結構持ち直しているように見えた― 増田七段は馬を逃げずに相手陣に果敢に攻め込む71手▲53桂打!大盤解説の青嶋六段も「いやー、鋭いですねー」と激賞。増田七段もその一手を手応えを感じた一手として挙げていました。
そして、増田七段は83手でもゆっくり安全に指して勝てそうな局面もそうはやらずに、勇猛果敢に相手陣にトップスピードで決めに行く▲74銀で再び同じプロである青嶋六段を驚かせていました。
自玉の危険度も激増する一手でしたが、そのまま増田七段が都成七段の後手玉を寄せて91手で勝利。
対抗形の見ごたえのある中盤の駆け引きや、将棋ファンを魅了する大技・小技が所々に出てきた素晴らしい一局だったと思います。

点線は52手 水匠5の最善手は△76桂
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