
4月9日に第73回NHK杯テレビ将棋トーナメント1回戦 横山泰明七段vs古森悠太五段が放送されました。
項目 | 横山泰明七段(42歳) | 古森悠太五段(27歳) |
---|---|---|
順位戦 | B級1組 | C級1組 |
竜王戦 | 4組 | 6組 |
通算成績 | 437勝281敗 勝率0.6086 | 99勝87敗 勝率0.5322 |
上の資料を見ると、横山七段の方が格上という感じですが、NHK杯は早指し棋戦なので、その点においては若い古森五段に利があるのかもしれません。
さて、本放送が始まって、まず驚いたのは解説の先生が四段の先生(冨田誠也四段)であったこと。
以前は都市伝説レベルの噂で解説は七段以上の棋士が務めると聞いたことがあったため、「驚いたね」と大棋士の名句まで記憶の底からよみがえりました。
対局前のインタビューで古森五段が振り飛車党であることが分かり、急に対局が興味深くなった次第。どこに振るのだろうかとワクワクしながら眺めていると、7手目▲78飛と先手三間飛車の構え。
一時期、三間飛車が流行っていた時期があったのですが、あの頃指されていたのは石田流で、本局で古森五段が指していたのは、絶滅の危機に瀕していたはずのノーマル三間飛車。
最近になって復活したのでしょうか?この前も女子オープンで西山女王が後手番でしたが、ノーマル三間飛車を指してました。
それで、後手の横山七段の方は対局前に長めの将棋を指したい旨を話していた通り、居飛車銀冠に構えて持久戦模様。
さらに先手の古森五段も穴熊を目指し始め、横山七段も負けじと銀冠穴熊を目指し始めたので、局面はもはや持久戦模様ではなく紛れもない本格的な持久戦になることが確定。
こうなると両者とも仕掛けるのが難しくなり、局面が膠着状態になるのが常で、その難しい状況で動いていかないといけないのが、プロ将棋では先手の義務のようなもの。
なんでも千日手になると先後を入れ替えて指し直しとなるため、後手の方にとっては有利な先手を持てるだけなので気が楽だという考えから成り立っているようで、定跡書などでもこの考え方が書かれているのをよく目にします。
しかし、プロといえども先手番の勝率は52%で、その微差の為に無理をする必要はあるのだろうかと、番組を見ている時にそういう考えが過ったのも事実。
本局は73手で既に考慮時間9回を使っていた古森五段が▲97桂と凄いところに桂馬を跳ねて、横山七段もその桂馬に狙われた85の歩を守ることなく、74手△54歩と飛車先の歩を伸ばして突っ張ったため、千日手は回避されていよいよ本格的な中盤戦に突入。
その後、古森五段は将棋ファンならば大方予想していただろう85の地点に桂馬を跳ねると、多くの人は次は▲73桂成とガリガリ攻め込む三間飛車の手筋を使うのだろうと予想していたと思うのですが(私は絶対それだと思っていた)、古森五段の次の一手は解説の冨田四段も意表を突かれた▲74歩の洒落た一手。
そこからしばらくは古森五段ペースで局面は展開されていましたが、100手で横山七段も飛車取りには飛車取りをとばかりに絶妙の角打ち△84角打を見せると、解説の冨田四段も「ほう」と嘆賞している様子。
画面に表示されていたコンピュータによる形勢判断も数手前までは古森五段持ちでしたが、その角打ち前後からいつの間にやら横山七段持ちに変わってました。
しかし人生は何事も塞翁が馬、おそらく、本局の明暗の分かれ道になったのは横山七段が8回目の考慮時間を使い、他の手と迷いながら指したと思われる守りの一手108手△32金引。
この一手に画面に表示されるコンピュータさんはオコ。再び古森五段持ちの先手60%と表示し直してました。
以下は相手玉に迫れる手数は古森五段の方が少し短いため、攻める古森五段、凌ぐ横山七段の構図は免れられず、その状況が最後まで変わることなく、135手▲11角成の必至を見て横山七段が投了。
私は将棋も音楽もミドルテンポが好きで、相穴熊はそれほど好みでもなかったのですが、最近はこういう将棋が激減していて、久しぶりに見た相穴熊戦に良い対局を観戦できたと思った次第。
◆水匠5の形勢評価グラフ

点線は108手△32金引。推奨の最善手は強く攻める△47と。
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