
4月11日に東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」で第8期叡王戦五番勝負第1局(藤井聡太叡王vs菅井竜也八段)が行われました。
今や六冠の藤井叡王に振り飛車党の菅井八段がどのように戦うのかが注目されている今期叡王戦五番勝負。
これまで藤井叡王とタイトル戦で闘った棋士は全て居飛車で挑んできたわけで、ならば振り飛車党のA級棋士ならばどうなるのだろうかと、他の棋士が闘うのとはまた別の興味を持っていたりします。
少し調べてみたところ、この対局が始まる前までの両対局者の直接対決は藤井叡王の5勝、菅井八段の3勝といい勝負。菅井八段といえば、四段時代に大和証券杯最強戦で1回戦の対羽生九段戦を制すると、そのままあれよあれよという間に優勝したというセンセーショナルな出来事は今でも記憶に残っており、それ以来、相手が強いと燃えるタイプではないかと勝手に思い込んでいたりします。
さて、本局は藤井叡王の先手で始まったわけですが、後手の菅井八段が飛車を振った場所は4手△32飛の三間飛車。先日のマイナビ女子オープン五番勝負も、一昨日のNHK杯もいずれもノーマル三間飛車。ここ最近の注目の一番は三間飛車の目白押しで、それを絶滅の危機に瀕していた戦法と書いてた私は嬉しいのだか、まるで嘘でも書いたかのようで気まずいのだか、まあ、嬉しいです(汗)
それはさておき、本局は序盤でもう一つ興味深い動きがありました。それは藤井叡王が11手▲96歩と玉側の端歩を突いた手に対し、菅井八段は端歩を突き返すことなく別の手を指したため、藤井叡王はすぐさま▲95歩と突き越し、早くも藤井叡王が端でポイントを挙げたような感じになってました。
なんだ、そんなことと思うかもしれませんが、「端歩は受けよ」という格言があるくらいで、それを無視して突き越させるパターンは、穴熊に組むか、相手に端で2手指させてる間に他で戦力を整えるかなのですが、菅井八段は穴熊には組みませんでしたし、戦いを仕掛けたのも藤井叡王で、端を突き越させたことに関してはABEMAの大盤でも疑問視されていました。
それで、攻勢に出て来た藤井叡王に対し、カウンターを狙うかのように応戦していたのですが、藤井叡王はとにかく強い。
それでも玉側の端のせめぎ合いになっていた時は、ABEMAの形勢判断は藤井叡王持ちの80%とかになっていたのですが、局面はまだまだこれからのような局面で、藤井叡王の持ち時間はほとんど無く、菅井八段の方が1時間近く余していたことを考えると、リアルタイムで見ていた時にはいい勝負になっているのではないかとも思っていました。
ところが、藤井叡王は1分将棋になってもコンピュータの最善手をビシバシと指し続け、差が縮まることは無く、101手ではABEMA大盤で木村九段が冗談で言ってみたという▲45飛という相手の角の頭の上に飛車を置く、見るからに風変わりな驚きの一手を着手すると、実はそれもABEMAコンピュータの最善手。
そして、そこから数手進むと、それまではピンチにも見えていた藤井叡王の先手玉は盤石となり、もはや付け入ることが出来そうな場所は無くなっていました。いつもながら、本当にすごかったです。
結局、147手で藤井叡王の勝利。藤井叡王側にピンチらしい局面があったとは思いませんが、上にも書いたように「ひょっとすると」と思うようなシチュエーションは有ったように思います。あと、「端歩は受けよ」の格言の信憑性は、藤井叡王によって保たれたような気もします。
第2局はお城と味噌料理で有名な名古屋。実は第3局も藤井叡王のホームである名古屋。名古屋市民が羨ましい。第3局も対抗形の熱戦になることを期待しています。
◆水匠5の形勢評価グラフ

コンピュータを信用すると、後手だったことが敗着になるのでしょうか?
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