
4月16日に第73回NHK杯テレビ将棋トーナメント1回戦 千田翔太七段vs出口若武六段が放送されました。
項目 | 千田翔太七段(29歳) | 出口若武六段(27歳) |
---|---|---|
順位戦 | B級1組 | C級1組 |
竜王戦 | 3組 | 6組 |
通算成績 | 306勝150敗 勝率0.6710 | 130勝65敗 勝率0.6666 |
御二方のキャリアから判断すると、順位戦も竜王戦も千田七段が上。タイトル戦登場回数は両者1回ずつ。一般棋戦は千田七段が朝日杯優勝1回。対局開始局面の評価値は千田七段の55%と言ったところでしょうか。
さて、対局は出口六段の先手で相掛かり。プロ将棋の戦型には流行りがありまして、少し前は角換わりが流行ってましたが、最近は相掛かりが流行りなのでしょうか。本局は稲葉八段の解説を聞いていた限り、早い段階で定跡局面ではない力勝負になっていた模様。
プロはプロを知るのか、50手の局面で解説の稲葉八段が指し手が難しい旨を話すと、出口六段も1回目の考慮時間を使って少考。▲35歩とぶつけて仕掛けたのですが、千田七段はそれに応じず51手△65桂と跳ねて、別の方面で戦闘開始。
出口六段にとっては想定外の一手だったのか、千田七段が60手で初めて考慮時間を使うまでに出口六段は少考を繰り返して6回の考慮時間を使ってました。
考慮時間の残り回数の差からも千田七段ペースになりつつあるように見えたのですが、大盤解説で鈴木女流が激賞していた稲葉八段の推奨手67手▲58桂打という凌ぎの絶妙手が対局盤上でも実現すると、その直後からは千田七段も少考を繰り返して如何にも苦戦の容子。
千田七段は72手で△88歩打と、稲葉八段も先が読めない難しい手と解説した一手から飛車先の強行突破を目指したのですが、飛車成りは実現したものの、その竜を自陣に追い返されると、出口六段の反撃開始。
そして、反撃開始の第一弾89手▲18角打に鈴木女流が「おーー、そこに!」と先の▲58桂打に続いて再び驚きの感投詞。その場所に打つ角は、俗に「遠見の角」と言われ、伝説の天野宗歩も指したことで名高い一手で、局面によって善悪は分かれるものの、将棋ファンならば「おっ?」と注目したくなる一手ではあります。
結果的には疑問手・悪手ではなかったらしく、その後は出口六段が一方的に攻める展開となり133手で出口六段の勝利。
中盤の駆け引きとねじり合いが味わい深い玄人好みの一局だったように思います。随所で稲葉八段が弟弟子の出口六段に対して、もう少し時間を使った方が良い旨を解説していたのも仲の良さが伝わって来て面白かったです。(両先生は井上慶太九段門下)
◆水匠5の形勢評価グラフ

点線は64手△39角打。水匠推奨は△59角打という難しい一手。
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