
4月23日に愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」で第8期叡王戦五番勝負第2局 藤井聡太叡王vs菅井竜也八段が行われました。
◆棋譜
http://live.shogi.or.jp/eiou/kifu/8/eiou202304230101.html
菅井八段の先手で、先手三間飛車穴熊vs後手居飛車穴熊となった序盤戦。
ABEMAの大盤解説は、本日NHK杯戦を東京のスタジオで戦っていたはずの三浦九段。
都会って「どこでもドア」があるんだろうかと思っている人もいらっしゃるかもしれませんので、念のために説明しておきますと、NHK杯戦の方は結果が伏せられている録画放送です。
以前、藤井叡王がデビュー以来の連勝記録を続けていた折に、藤井叡王が勝つたびにテレビニュースで放送されていたものだから、放送前のNHK杯戦で勝利していたことが明るみになるハプニングがあったのは懐かしい思い出。
当時は藤井叡王も下位の棋士とばかり対戦していたので物凄い勝率だったのですが、あれから6年が過ぎ、藤井叡王も上位の棋士とばかり対戦する状況に変わったのですが、今でも年間勝率8割を超えている恐ろしい勝ちっぷり。
そこまで他を圧倒している状況になると、対戦相手の棋士がどのような頑張りを見せるのだろうかという点が興味深いポイントだったりします。
本局の菅井八段は35手▲68角から41手▲79角(次に▲93角で石田流の好形を望める)の角の転換がすこぶる評判が良く、まだ序盤ともいえる局面でしたが、ABEMAのコンピュータによる評価は藤井叡王側が40%になっていて、奇跡でも起こったかのような状況になっていました。
その後、60手頃にはいつの間にかABEMAコンピュータの評価が50%に戻っていたのですが、大盤解説の三浦九段や本田五段の評価はコンピュータさんに反して菅井八段有利。
プロはプロを知るで、プロ対局での形勢評価はプロの解説が一番正しいのですが、ABEMAコンピュータはABEMAコンピュータで、初心者の方々を喜ばせるのは非常に巧いのだから必要であることは否めません。
しかも、指している方が読みの精度ではプロの中でも抜きんでている藤井叡王なので、大盤の先生方が見えてない何かが見えている可能性も多分にあり、本当に五分では無いのだろうかと、ABEMAコンピュータを信じかけていたのも事実。
ところが70手まで進むと、ABEMAコンピュータは依然として五分だと言い張っていたのですが、菅井八段の残り時間1時間に対して、藤井叡王は1分将棋。(その時間の使い方を見ても、藤井叡王は形勢互角とは思っていなかったのでは?)
こうなってくると、仮に局面は互角であっても、勝負という意味においては菅井八段優勢。
そういうピンチを迎えると、強い人というのは常人全てがぶっ魂消る物凄い力を発揮することもあるのですが(藤井叡王がやっていたのも何回も見た)、手数計算をしやすい相穴熊戦ではそういうのが出にくいのか、それとも菅井八段の指しまわしがパーフェクトで付け入る隙は無かったのか、最後まで波乱はなく菅井八段の勝利に収束。穴熊戦ではありがちですが、最後は大差でした。
これで五番勝負は1対1のイーブン。第4局が岩手県の浄土ヶ浜で行われることが確定。
両対局者のこれまでの対戦成績も藤井叡王の6勝、菅井八段の4勝と五分に近い数字。
「ひょっとすると」の可能性はあると思います。藤井叡王の強さから考えて、5割よりも低いとは思いますけど。叡王戦五番勝負はいよいよおもしろくなってきました。第3局も名古屋で行われます。全将棋ファン必見。
◆水匠5の形勢評価グラフ

赤いラインは42手△86歩。水匠の最善手は△94歩。
- 関連記事
-
-
第81期名人戦七番勝負第2局初日の感想
-
第8期叡王戦五番勝負第2局の感想
-
NHK杯 千田七段vs出口六段の感想
-