難易度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
将棋観戦記者である椎名龍一さんが書いた詰将棋の本です。作者は初心者の将棋講座を務めた経験がある旨のことを書いてるだけあって、初心者を引き付ける問題集になっているようです。
ただし、全くの初心者が読める内容ではありません。原始棒銀を覚え仲間内や学校のクラスで無敵になったばかりの方にお勧めしたい一冊です。実戦力を鍛える3手詰の問題集としては、この本が最高の良書ではないでしょうか。
基本編では140問の詰将棋が掲載されており、1ページに2問掲載で下段が3手詰、上段が下段の詰将棋を2手進めて残り1手の状態になった局面の1手詰です。最初に残り一手で詰む状態を見せて、次にその局面をどうやって作るのかを考えさせるのがこの本の狙いのようです。
基本編の問題は、実戦に役に立つ詰手筋を教えてくれる良問ばかりです。初心者をうまく3手詰攻略にナビゲートしてくれています。この内容ははっきり優れています。
実戦編は40枚すべての駒を使った3手詰で、駒余りを無視した実戦形式の詰将棋が136問収録されています。「激指7」の実戦詰将棋道場に似ているのですが、こちらの場合は詰み筋が一つしか存在しません。こういった問題を中心にした詰将棋の本はあまり存在しないのですが、棋力を高めるにはこういう問題の方が優れていると思います。並べ詰もあれば、実戦では滅多に出てこない大技を使うものがあったり、引っ掛け問題がチラホラあったりとバラエティに富んでました。この実戦編は、ある意味目新しく、解いていて楽しいと思わせる内容でした。
難易度は基本編は私の棋力(24の2級)で見た瞬間わかる問題ばかりで、実戦編は5秒でわかるものもあれば、30秒以上考えるものもあったりとバラツキがありました。40枚の駒が並び駒余りを無視すると普通の3手詰より難しくなっていると思ったのが率直な感想です。
基本編もすばらしいし、実戦編もすばらしいのですが、その二つの難易度にギャップがあることがこの本の惜しいところです。基本編は「24」の14~15級の方を、実戦編は「24」の10級前後の方を対象にした内容だと思います。ですから、基本編から実戦編に進まれる前に通常の簡単な3手詰の本を一冊読まれた方がスムーズに棋力向上を実現できると思います。